本研究の目的は,底質条件の異なる水域における付着藻類の種類構成,現存量および基礎生産を測定し,付着藻類の動態を底質構造との関係において明らかにすることによって水質保全対策に貢献することである.この目的のため,琵琶湖北湖沿岸域の底質の相違により選定した地点において,付着藻類の採集調査および物理化学的環境要因の観測を行い,前年度までに現存量の分布,基礎生産量の測定についてまとめた.平成25年度は,主に沿岸域の底質の特性との関係において付着藻類の種構成における特性についての解析を進めた.対象とするいずれの水域においても,緑藻および珪藻に所属する種群が優占的に出現していた.砂質が優占する底質である水域のうち,ほぼすべての地点で,小さい糸状体の藍藻が出現した.一方,中礫以上の礫質の底質である水域においては,Spirogyraなどの大型の緑藻が少なくともいずれかの時季について,優占的に出現した.各地点の付着藻類の群集構造は,同じ底質構造である地点間で似た傾向を示した.採集時により,変動があるが,岩や大礫が優占する地点では,クロロフィルa量でみた現存量は高い傾向が見られ,これら大型の緑藻類の寄与が大きいと考えられる.珪藻群集の種類構成にも,礫質と砂質の地点について,それぞれ優占的に出現する種群が見られるという傾向が認められた.本研究の結果は,底質構造に見られる特性は,沿岸域生態系の基盤である付着藻類の藻類量,群集構造,種類構成に影響する主要な要因であることを示すと考えられる.これら結果を中心として,成果は陸水学会第79回大会において報告した.また,これまでの成果をまとめ,SIL2013において,報告した.
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