研究課題/領域番号 |
23510017
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
豊田 新 岡山理科大学, 理学部, 教授 (40207650)
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研究分担者 |
多田 隆治 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30143366)
高田 将志 奈良女子大学, 文学部, 教授 (60273827)
西戸 裕嗣 岡山理科大学, 総合情報学部, 教授 (30140487)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 電子スピン共鳴 / 堆積物 / 運搬 / 起源 / 石英 / ルミネッセンス / 結晶化度 |
研究概要 |
地球表層における堆積物の運搬は、大気循環、河川の消長といった気候変動と直接関係するだけでなく、地域のテクトニクスやそれと関連した河川争奪など、地球科学のさまざまな現象を反映していている。本研究では、石英中の電子スピン共鳴信号、結晶化度、ルミネッセンス特性といった物理特性が、これまでの指標とは異なった特性の、起源地の情報を持っていることを示し、風送塵や河川堆積物の運搬の有効な指標として確立することを目的とする。本年度は、これまでに予備的な結果の得られている奈良県の木津川について、支流を含めて15か所において試料採取を行い、石英を抽出し、これらの試料中の石英にみられるESR信号の特性について検討を行った。ガンマ線照射を行ったところ、石英中には、不純物として含まれるアルミニウム、ゲルマニウム、チタンに関連した信号、また酸素空孔に関連したE1’中心の信号が観測された。不純物中心についてガンマ線照射による線量応答曲線が得られたが、その飽和値と、飽和曲線の原点付近に直線を当てはめたその傾きとの間によい相関があることがわかり、4kGy程度照射した飽和値を取ることで簡便に特徴化ができることがわかった。それを用いて木津川全体について解析を試みたが、局所的にはそれぞれの各信号間に相関はみられるものの、全体として端成分が得られてその混合ですべてが説明できるという単純なモデルが適用できるものではないことがわかった。支流からの別の堆積物の混合がどのように記述できるのか、といった基礎過程の検討に戻る必要があると考えられるが、それには現時点では試料数が不足していると判断される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
木津川の堆積物について調べた結果、以前の結果と異なった部分があること、また、単純に端成分が得られて、その混合で堆積物が説明できるという単純な図式が当てはまらないことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
支流からの別の堆積物の混合がどのように記述できるのか、といった基礎過程の検討に戻る必要があると考えられるが、それには現時点では試料数が不足していると判断される。木津川の分析試料数を増やし、また、支流からの川の合流地点を精査することによって、混合がどのようにデータに表れるのかを集中的に観測して、基礎的な混合過程を研究したうえで、木津川全体の堆積物の混合過程を議論する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
入手した試料についての分析結果が予想に反したものであったために、詳細な分析が必要となり、試料採取の予定を見送ったこと、また福島第一原子力発電所事故に関連した放射線計測関係の測定のために時間を割いたため、研究の進行状況が遅れると共に、研究費に残金が生じた。上記のように本年度の研究を進めるが、試料数が増大するので、それに対応した試料処理のための謝金を計上するなどして、分析速度の向上を図り、当初の目標が実現できるようにする。
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