研究課題/領域番号 |
23510017
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
豊田 新 岡山理科大学, 理学部, 教授 (40207650)
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研究分担者 |
多田 隆治 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30143366)
高田 将志 奈良女子大学, 文学部, 教授 (60273827)
西戸 裕嗣 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (30140487)
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キーワード | 電子スピン共鳴 / 熱ルミネッセンス / カソードルミネッセンス / 光刺激ルミネッセンス / 堆積物 / 石英 / 起源 |
研究概要 |
これまでの研究で、最もよく用いられ、有効な指標と考えられる石英のE1'中心(酸素空孔の不対電子)のESR(電子スピン共鳴)信号測定の定量測定の精度向上のため、信号強度に与える要因について研究を進めた。石英が純化されないために試料に粘土鉱物が混入した場合、E1'中心の信号強度が過少評価されることがわり、石英をできるだけ純化することが重要であることがわかった。この原因は、鉱物に含まれるOH結合によるマイクロ波の吸収によって信号強度のマイクロ波強度依存性が変化するのみではないことが実験によって判明した。付近の磁性鉱物からの受ける磁場の影響について検討が必要である。 木津川流域の堆積物試料については、支流の室生川について15試料を集中して分析した。その結果、E1'中心から求められる酸素空孔量、アルミニウム中心、チタン中心、ゲルマニウム中心についてそれぞれ10%のばらつきがあることがわかった。一方、他の支流については、このばらつきを越えた変動が観測されることから、これらの複数の信号を指標として用いることによって支流の堆積物を特徴化できる可能性があることがわかった。 黒部川の現河床堆積物について熱ルミネッセンス分光測定を行った。100℃から250℃までの低温の 400~550nm の青色発光、同じく低温の 600~750nm の赤色発光、250℃から380℃の範囲の高温の赤色発光の3つの主要な成分が見られた。現在5点の測定と数が少なく予備的な結果であるが、上流から下流にかけて高温赤色に対する低温青色の発光の比が小さくなっていくことが見いだされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、木津川の流域の堆積物について、ESR信号を用いて支流を区別できる可能性が示されたほか、熱ルミネッセンスの分光測定が同様の目的のために有効である可能性が示された。本研究においては、試料採取、分析に使用する鉱物の抽出、ガンマ線照射、ESR及び熱ルミネッセンス測定というサイクルを繰り返していくことになるが、分析に使用する鉱物の抽出に当初の想定より時間がかかることが判明し、分析の遅れの原因となった。このために、次いで、次のサイクルの試料採取が気候上の理由のために遅れ、さらに次の解析が遅れを招いている。
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今後の研究の推進方策 |
木津川流域については5月末及び10月に、黒部川流域については8月にそれぞれ試料採取を予定している。現在までに得られたデータを精査し、目的を絞り込むことで、当初目指した流域全体の堆積物の起源地を明らかにすることまではできなくとも、より狭い流域で堆積物の供給割合の定量化といった一定の結論が得られるように研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
試料採取、分析に使用する鉱物の抽出、ガンマ線照射、ESR及び熱ルミネッセンス測定というサイクルが遅れた結果、使用する研究費が少なくなり、繰り越しが生じている。これを今年度、木津川流域試料の分析のサイクルを当初の予定より1回増やすために必要となる費用に充てるほか、アルバイトの雇用により石英の抽出手順の迅速化を図り、分析サイクルの遅れを取り戻す予定である。
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