研究課題/領域番号 |
23510017
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
豊田 新 岡山理科大学, 理学部, 教授 (40207650)
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研究分担者 |
多田 隆治 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30143366)
高田 将志 奈良女子大学, 文学部, 教授 (60273827)
西戸 裕嗣 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (30140487)
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キーワード | 電子スピン共鳴 / 熱ルミネッセンス / 堆積物 / 石英 / 起源 / 降下物 |
研究概要 |
堆積物の運搬を明らかにする理化学的な手法の開発は、過去の気候変動や物質循環を再現において、大きな手がかりを与える強力な手法となることが期待できる。堆積物の主要な成分である石英中の電子スピン共鳴信号及びルミネッセンス特性が、これまでの指標とは異なった特性の起源地の情報を持っていることを示し、風送塵や河川堆積物の運搬の有効な指標として確立することを目的とする。 風送塵については、最近50年間の福岡と米子の降下物に含まれる石英の酸素空孔量が黄砂の観測日日数と相関する一方で、秋田ではそのような傾向がなく、徐々に減少していることが明らかになった。 一方、河川堆積物については木津川と黒部川について石英の電子スピン共鳴信号及びルミネッセンス特性を調べた。木津川については、支流との合流を2か所経て、ESR信号が変化することがわかった。流下する地域の地質との相関が示唆される一方で、それをはっきり証明できるには信号強度のばらつきが大きかった。しかし、2か所の合流地点の1か所については、堆積物の混合割合求められ、複数の指標を用いてほぼ一致した結果が得られた。粒径ごとに混合割合が異なることが明らかにできるという新しい知見を得ることができた。 黒部川の河川堆積物について黒部川の現河床堆積物について熱ルミネッセンス分光測定を行った。100℃から250℃までの低温の 400~550nm の青色発光、同じく低温の 600~750nm の赤色発光、250℃から380℃の範囲の高温の赤色発光の3つの主要な成分が見られ、上流から下流にかけて高温赤色に対する低温青色の発光の比が小さくなっていくことが見いだされた。また、2012年と2013年に採取した堆積物について大きく信号強度が異なり、年変動があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
分析に使用する鉱物の抽出に当初の想定より時間がかかり、試料採取から分析までのサイクルが遅れた。木津川の堆積物については、ばらつきが大きく、解析を慎重に時間をかけて行ったこともあり、昨年度、このサイクルを2回行う予定が1回しかできなかった。黒部川については、年によって堆積物が変化するという新しい知見が得られた一方で、流域全体の傾向を見るための測定点数が不足することになり、この観点からの考察ができなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、試料採取、分析に使用する鉱物の抽出、ガンマ線照射、ESR測定及び熱ルミネッセンス測定というサイクルを繰り返すことによって行われる。木津川、黒部川であと1回ずつこのサイクルを行い、流域全体の堆積物の特徴と混合、起源の推定を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
分析に使用する鉱物の抽出に当初の想定より時間がかかり、試料採取から分析までのサイクルが遅れた。木津川について解析に時間をかけて行ったため、今年度2回行う予定が1回しかできなかった。黒部川については年によって堆積物の供給源が変化しているという新しい知見も得られており、この点を含めて、慎重に来年度に試料採取から分析までを木津川、黒部川であと1回ずつ行うことが成果を上げるために適切と判断した。 本研究は、試料採取、分析に使用する鉱物の抽出、ガンマ線照射、ESR及び熱ルミネッセンス測定というサイクルを繰り返すことによって行われる。木津川、黒部川であと1回ずつこの分析サイクルを行うための旅費、化学薬品の購入、測定及びデータ解析にかかる消耗品の購入等に充てる。
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