研究課題/領域番号 |
23510018
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
葉山 清輝 熊本高等専門学校, 情報通信エレクトロニクス工学科, 教授 (00238148)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環境分析 / 大気現象 / 計測工学 / リモートセンシング / 電子航法 |
研究概要 |
近年の環境問題や環境意識の高まりから,地域環境に対する様々な環境物質定量化,環境計測手法が望まれている.本研究では,独自の機体構造を用いた垂直上昇・下降機により,地上から3000m程度の自動環境計測機を開発することを目的としている. 本年度は、GPSほかセンサによりプロペラの反力で自転したままの航行制御できる飛行体の自律化に取り組んだ。まず、本体、制御機構、制御基板、動作プログラムなど各要素を開発し、一部無線操縦による個々の動作検証までができた。 しかし、機体の安定性に問題が残り、年度内に完全な自律飛行には至らなかったため、計画が遅れるが原因追求を行った。その結果、回転する飛行体の傾きに制御を加えると、制御の方向と垂直方向にコリオリ力が働き、機体に歳差運動を起こさせてしまうこと、尾翼の操作だけでは歳差運動を抑制する機構が足りないこと、機体が傾き過ぎると自転できなくなるため制御不能になっていることがわかった。その対策として制御尾翼と垂直に安定化尾翼を追加することで機体を安定させることができ、更に、直行した尾翼に制御と安定化の両方の機能を持たせることで、より確実な制御ができることが分かった。一方、尾翼の制御が1軸の場合の操縦性は自転速度に大きく依存しており、空気抵抗の高度による変化に伴う自転速度の変化も操縦性に大きな影響を及ぼすと推察していたが、尾翼の操縦を1軸追加することで、自転速度の変化にも対応できるようになり、高高度飛行で不具合が生じることもないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提案した自転式飛行体の機体の安定性に問題があり、飛行体の自律飛行ができなかったために、計画通りに研究が進まなかった。計画では、低高度用の機体により自律飛行を確立した後、高高度用の機体の開発を目指す予定であったが、今年度は、安定した機体の製作を行うことに終始してしまい、自律飛行と高高度用の機体の開発は未遂行である。しかし、研究機体が安定しない原因を解明し、機体の制御機構を改良して機体を安定させることができ、更に、直行した尾翼に制御と安定化の両方の機能を持たせることで、より確実な制御ができることが分かり、計画外だが価値のある成果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
機体安定性の問題が解決できる見通しがついたので、今年度は、早急に自律飛行を達成する。続いて上空の1000mの獲得高度の中型機製作および3000mの獲得高度の大型機の製作を行い,主に気温データ収集により実用性について示すことを目標とする. 次に,完成した試作機での気温以外にも複数項目の観測データ取得を行う.得られた結果について,例えば繋留気球による観測と,計測機の飛行中の計測と静気流中での計測結果の比較など,本計測機の実測値の検証を行う.さらに,複数個所の定点での観測データを蓄積し,気象状況とデータの比較により本研究の提唱する観測機の実用性を検証する. 一方、自転式飛行体の飛行原理と飛行安定性についても本年度の研究で新たな知見が得られたので、これを理論的に検証して自転式飛行体の飛行理論確立を目指すとともに、成果公表を行なっていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
先に述べたように、本年度の研究が計画より遅れ、気象観測用の小型飛行体の自律飛行が確立できなかったため、中型、大型飛行体の製作に至らず、そのための経費を使用しなかった。 本年度残額は次年度持ち越しとし、次年度では本年度製作できなかった中型・大型機の試作を早急に行う。引き続いて、本来の計画通りの実証試験に伴う経費の支出を行う。 主な支出予定は、複数台の飛行体製作費、搭載する各種気象センサの購入・調整費、および実地試験およびそれまでの成果公表の旅費である。
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