研究課題/領域番号 |
23510018
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研究機関 | 熊本高等専門学校 |
研究代表者 |
葉山 清輝 熊本高等専門学校, 情報通信エレクトロニク工学科, 教授 (00238148)
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キーワード | 環境分析 / 大気現象 / 計測工学 / リモートセンシング / 電子航法 |
研究概要 |
近年の環境問題や環境意識の高まりから,地域環境に対する様々な環境物質定量化,環境計測手法が望まれている.特に最近はPM2.5の飛来など環境計測の直接的なニーズが高まっている.本研究では,独自の機体構造を用いた自動環境計測機を開発することを目的としている. 昨年度の研究で飛行体の姿勢制御の理論とその方法について明らかにした.本年度は飛行体の自律化と高高度飛行について取り組んだ.まず飛行体の自律飛行について,水平面内の位置制御についてはGPSを用いて行うことが可能となった.しかし,高さ方向の位置制御については,GPSの高度計測の精度が十分でなく値も不安定であるために,GPSのみを用いた高度の自律制御が困難であった.そこで高精度の気圧センサを高度制御に用いることとし,飛行体の改良を施した結果,飛行体の高度制御が可能であることを確かめた.しかし,まだ完全自律には至っておらず,現在は安定した自律のために飛行制御パラメータの最適化を行いるところである. 高高度飛行のために上昇力を上げるためには,モータ・プロペラの大型化とモータの多重化(二重反転モータの利用)が考えられる.本年度は二重反転モータの利用による上昇力の増加を狙った機体製作を行った.二重反転モータを利用すればプロペラの反力を相互に打ち消すことができるため機体の自転制御は不要となる.しかし,機体の二重反転型のヘリコプターに機体の自転制御を組み込むことで,機体を回転させながらの飛行制御が可能となり,移動しながらの全方向のカメラ観測等が実現できる.通常の二重反転型ヘリコプターはモータの一方に不具合を生じた時に制御不能に陥ってしまうが,機体の自転制御によりこのような時でも帰還可能となるフェイルセーフ機能を与えることができる.この二重反転型のフェイルセーフ機能については平成25年の熊本県産学官技術交流会にて報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提案した自転式飛行体の機体の安定性は昨年度の成果で向上したが,高度制御が困難なために完全な自律飛行に至っていない.そのため,高高度飛行および観測試験がまだできていない状態にある.本年度の研究によりGPSと気圧センサを併用することで高度制御が可能なことまではわかったので,次年度には完全な自律飛行が達成できると考えており,観測試験が実施可能になると思われる. 一方,高高度飛行のため上昇力増加の手法として二重反転モータを用いた自転式制御の機体を試作した.その結果,浮上機構の冗長化とフェイルセーフ機能について,計画外だが価値ある成果を得ることができた.飛行体の実用化に際しては十分な上昇力と安全性の確保は必要不可欠なので,二重反転モータを用いた機体製作を主軸におくことに方針を変更したことも研究が遅れている理由である. 更に飛行効率の向上を目指して自転式飛行制御を用いた新たな機体構造を考案し,当初の予定にはなかったがその試作と評価の実験も行っていたために当初の目標達成が遅れている.この件については現在特許申請の準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
二重反転モータを用いた自転式飛行体の自律飛行が出来る見通しがついたので,今年度は早急に完全な自律飛行を達成して高高度飛行を目指す.また,性能比較のために購入したマルチコプターや共同研究者が別に所有する係留気球との性能比較を行い,本研究の提唱する自転式自律飛行体の優位な点を明らかにしていく.更に進行中の特許出願も進めていく. 次年度より環境計測分野において実績のある共同研究者を加えて,飛行体による環境計測試験を本格的に開始する.得られた計測結果により実用性について示すことを目標する. 最終年度であるので,これまで得られた成果をまとめ,学会,研究会で発表を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の経費で飛行体製作のための主要部品の購入は済んでいる.これまでは飛行体の試作を主に行なってきたので環境計測用のセンサは,温度,気圧計のみを搭載していたが,次年度はその他有用と思われる計測機器の購入を行う.そのほかの経費は成果発表の参加費及び旅費にあてる. 次年度は共同研究者に研究経費の一部を割り当て,環境計測試験と成果発表を分担して行なってもらう.
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