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2011 年度 実施状況報告書

海洋貧酸素化は海底の生元素質循環にどのような変化をもたらすか?

研究課題

研究課題/領域番号 23510022
研究機関独立行政法人海洋研究開発機構

研究代表者

小栗 一将  独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, 技術研究主任 (10359177)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード海洋無酸素化 / 酸素極小層 / 八戸沖 / 堆積物-水境界
研究概要

海洋酸性化と共に懸念される海底での溶存酸素の欠乏に対し、親生物元素のフラックスはどう変化するかという問題を明らかにするため、溶存酸素濃度(DO)が低い海洋環境において、堆積物-水境界の酸素濃度プロファイルと酸素消費フラックスを測定し、これらの結果から推測される二酸化炭素フラックスの計算を行った。DO減少海洋のモデルとして、内湾を除く日本近海で酸素濃度が最も低下すると考えられる下北半島・八戸沖を選んだ。この海域は高一次生産量に伴う好気分解が活発なため、水深800-1100mのDOが30-50μMと低い値を示す。本研究では淡青丸KT11-20航海において、この酸素極小層を挟んだ3つの異なる水深(500m DO=112μM, 1000m DO=36μM, DO= 2000m DO= DO=70μM)にてマルチプルコアをそれぞれ採取し、酸素濃度プロファイルを測定した。コアは船内にて現場の水温、DOに設定した超高精度インキュベーター「Super Oxystat」(本研究計画の下、研究代表者が新規開発)を用いたインキュベーションの後、微小電極装置を用いて微小プロファイルを測定した。500m, 100m, 2000mにおける酸素検出深度はそれぞれ1.8-2.8mm, 3.8-6.8mm, 5mmであり、拡散モデルに基づく酸素消費フラックスはそれぞれ2.7-4.2, 0.6-0.7, 1.4-1.6mm m-2 d-1であった。これらの値にレッドフィールド比(C:O2=106:138)を適用し、海底での二酸化炭素フラックスを計算したところ、それぞれ2.1-3.1, 0.5, 1.1-1.2 mmolC m-2 d-1となった。この値は衛星データの解析によるフラックス(30-80mmolC m-2 d-1: Ishizaka, 1998)の0.6-10%であることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

予定されていた下北半島・八戸沖の航海において、目的に応じた試料採取、測定を行い、親生物元素フラックス(酸素、二酸化炭素)の推定まで行うことができた。これによって、水深の深い日本の近海では相模湾を除きほとんど行われていない、海底における酸素プロファイルの測定や、フラックスの測定を行うことが出来た。また、観測において、当初は現場観測のためのプロファイラー開発を予定していたが、使用する船舶は海底で測定するプロファイラーの運用が難しいため、本年度の開発方針として、マルチプルコアラーで得た試料をインキュベーションする方法を選択した。このためには海底現場の水温とDOを非常に高精度かつ安定的に制御できるインキュベーターが不可欠になるが、この装置の開発にも成功した。これによって、我々は酸素濃度、消費フラックスの計測について大きなノウハウを得ることができた。これらの研究成果は早くも2012年4月のEuropean Geosciences Unionにおいて発表し、八戸沖の酸素極小層の存在と、その親生物元素循環過程を海外の研究者にも紹介することができた。よって、本研究は多少の方針の変更はあったが当初の計画以上に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

平成24年度は、観測によるデータの蓄積と装置開発の双方の研究を進める。前者は、海洋研究開発機構の船舶による乗船研究の機会を得られたため、仙台、三陸沖の酸素極小層において酸素濃度プロファイルの現場計測を行う。装置には二次元酸素濃度測定装置を使用し、クモヒトデなどが大量に生息している酸素極小層におけるバイオターべーションと海底への酸素の拡散過程を可視化、検証する。また、より正確な酸素消費フラックスを得るためには、微小電極による酸素濃度プロファイルを現場で測定することが望ましい。このため、ROV、潜水艇やランダーシステムに搭載できるプロファイラーの開発を継続する。さらに、平成25年度(最終年度)も現場における観測を行いたいため、船舶を使用する機会を得られるようプロポーザルの準備も進める。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度の執行予算は、平成23年度からの繰越金を含め934,773円である。このうち約50万円を旅費に使用する。出張先は2012年4月にウィーンで開かれるEuropean Geosciences Unionであり、ここで昨年度の研究で得られた知見について研究発表を行う。また、現場観測において優れた技術を有する、スコットランド海洋科学研究協会で開発に関するディスカッションを行うための旅費に用いる。この成果は現場観測プロファイラーや酸素・pHの二次元センサの開発に適用する。約30万円は物品費に用いるが、大物の購入は平成23年度でほぼ終了しているため、平成24年度は実験試薬や電子部品などに用いる予定である。残り約10万円については、その他の予算とし、論文投稿料や耐圧容器の製作に使用予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Excess 210Pb and 137Cs concentrations, mass accumulation rates, and sedimentary processes on the Bering Sea continental shelf.2012

    • 著者名/発表者名
      Kazumasa Oguri, Naomi Harada, Osamu Tadai
    • 雑誌名

      Deep-Sea Research II

      巻: 61-64 ページ: 193-204

    • DOI

      DOI:10.1016/j.dsr2.2011.03.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Provenance of terrigenous detritus of the surface sediments in the Bering and Chukchi Seas as derived from Sr and Nd isotopes: Implications for recent climate change in the Arctic regions2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshihiro Asahara, Fumi Takeuchi, Kana Nagashima, Naomi Harada, Koshi Yamamoto, Kazumasa Oguri, Osamu Tadai
    • 雑誌名

      Deep-Sea Research II

      巻: 61-64 ページ: 155-171

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Epi-benthic megafauna zonation across an oxygen minimum zone at the Indian continental margin2011

    • 著者名/発表者名
      William R Hunter, Kazumasa Oguri, Hiroshi Kitazato, Zakir A Ansari, Ursula Witte
    • 雑誌名

      Deep-Sea Research I

      巻: 58 ページ: 699-710

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ガンマ線スペクトロメトリーにおける210Pb,214Pbの解析方法に関する検討2011

    • 著者名/発表者名
      小栗一将, 杉崎彩子, 飯島耕一, 坂本竜彦, 北里 洋
    • 雑誌名

      JAMSTEC Report of Research and Development,

      巻: 12 ページ: 27-36

    • 査読あり
  • [学会発表] 東北地方太平洋沖地震後の日本海溝海底の様子と堆積物の特徴2012

    • 著者名/発表者名
      小栗一将,豊福高志,坂口有人,川村喜一郎,笠谷貴史
    • 学会等名
      日本海洋学会2011年度春季大会
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      2012年3月23日
  • [学会発表] 2011年東北沖地震後に「ランダー」による津波波源域の日本海溝底の探査2012

    • 著者名/発表者名
      小栗一将,豊福高志,坂口有人,川村喜一郎,笠谷貴史
    • 学会等名
      ブルーアース2012
    • 発表場所
      東京海洋大学品川キャンパス
    • 年月日
      2012年2月22日

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公開日: 2013-07-10  

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