研究概要 |
海洋酸性化と共に懸念される海底での溶存酸素の欠乏に対し、親生物元素のフラックスはどう変化するかという問題を明らかにするため、溶存酸素濃度(DO)が低い海洋環境において、堆積物-水境界の酸素濃度プロファイルと酸素消費フラックスを測定し、これらの結果から推測される二酸化炭素フラックスの計算を行った。DO減少海洋のモデルとして、内湾を除く日本近海で酸素濃度が最も低下すると考えられる下北半島・八戸沖を選んだ。この海域は高一次生産量に伴う好気分解が活発なため、水深800-1100mのDOが30-50μMと低い値を示す。本研究では淡青丸KT11-20航海において、この酸素極小層を挟んだ3つの異なる水深(500m DO=112μM, 1000m DO=36μM, DO= 2000m DO= DO=70μM)にてマルチプルコアをそれぞれ採取し、酸素濃度プロファイルを測定した。コアは船内にて現場の水温、DOに設定した超高精度インキュベーター「Super Oxystat」(本研究計画の下、研究代表者が新規開発)を用いたインキュベーションの後、微小電極装置を用いて微小プロファイルを測定した。500m, 100m, 2000mにおける酸素検出深度はそれぞれ1.8-2.8mm, 3.8-6.8mm, 5mmであり、拡散モデルに基づく酸素消費フラックスはそれぞれ2.7-4.2, 0.6-0.7, 1.4-1.6mm m-2 d-1であった。これらの値にレッドフィールド比(C:O2=106:138)を適用し、海底での二酸化炭素フラックスを計算したところ、それぞれ2.1-3.1, 0.5, 1.1-1.2 mmolC m-2 d-1となった。この値は衛星データの解析によるフラックス(30-80mmolC m-2 d-1: Ishizaka, 1998)の0.6-10%であることが判明した。
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