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2011 年度 実施状況報告書

地球温暖化ならびに海洋酸性化がサンゴモと海草の生長量に与える影響の評価

研究課題

研究課題/領域番号 23510023
研究機関独立行政法人海洋研究開発機構

研究代表者

田中 義幸  独立行政法人海洋研究開発機構, むつ研究所, 研究員 (50396818)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード地球温暖化 / 海洋酸性化 / 海草 / サンゴモ
研究概要

サブテーマ1.「定量的な生物群集・環境調査」の成果として、陸奥湾にてアマモの生育状況が特に良好な「かわうちまりんびーち」地先を、津軽海峡にて暖海性と寒海性の大型藻類が混生することから今後の環境変動に対する沿岸生態系の応答をモニターする地点として適した「ちぢり浜」地先を、本研究の中心的な調査地点として選定した。それぞれの地点で野外調査を行い本研究の対象種を選定した。陸奥湾では、浅い地点を中心に分布するアマモと深い地点を中心に分布するスゲアマモを選定した。また、津軽海峡で実施した調査の結果、ピリヒバとイソキリを候補としたが、サンゴモの同定は、想定以上に困難であることを確認した。特にピリヒバと近縁種ミヤヒバとの分類・同定は困難であった。アマモとスゲアマモについては、クロロフィル蛍光測定装置(Diving PAM)を利用して、励起光に対する蛍光を測定し、光強度の変化にともなう電子伝達速度を計算したところ、アマモの方が有意に高い電子伝達速度を示すことが明らかになった。また、サブテーマ2.「 水温・二酸化炭素濃度を操作した恒温槽実験」の成果として、実験室においてアマモと複数のサンゴモに関して試験的な培養を実施し、想定する温度・二酸化炭素濃度の操作実験の期間、それぞれの種が良好な状況で生残しうる可能性を検討した。両種とも一定期間生残したが、よりよい成果を得るためにはin situ より採集した、すなわち地下茎や藻体の一部が破損した試料ではなく、種子や胞子から培養した試料を用いるべきであることが示唆された。恒温槽内の3つの水槽の二酸化炭素濃度を操作する実験装置を立ち上げ、操作を加えないコントロールとして400ppm 程度、 2100 年ごろの予測値として700ppm程度、それ上回る値として1000ppm 程度に維持することができるよう調整を進めており、概ね良好な結果を得ることができている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に挙げた項目を概ね遂行することができた。しかしながら、炭素同位体比分析に関しては、研究協力をいただく予定であった東京大学大気海洋研究所の質量分析計が昨年の震災の影響で使用不能になり、マシンタイムの調整がなされたことから平成23年度中には実施できなかった。平成24年度夏季には、当該機器が復旧見込みであり、すでにマシンタイムの調整をいただいている。可及的速やかに平成23年度に採集した試料の分析を行う予定である。

今後の研究の推進方策

サブテーマ1「定量的な生物群集・環境調査」:初年度の調査を踏まえ、特に対象種ならびに対象地域における定量的な情報を集積する。室内実験に供するため、in situ より直接採集した草体や藻体だけでなく、種子や胞子の採集・培養を実施する。また、サンゴモに関する同定の精度を向上させる。サブテーマ2「水温・二酸化炭素濃度を操作した恒温槽実験」:初年度の知見を踏まえ、水温・酸性化を組み合わせて変化させた培養実験を実施し定量的なデータを得る。二酸化炭素分圧は、初年度に検討した400ppm 程度, 700ppm 程度、1000ppm程度に制御し、海水温は、現状の調査海域における最適温度周辺から5~10℃程度低い温度と高い温度を決定して培養を行うことを目指す。酸性化に対して海草は正の影響、サンゴモは負の影響を受けることがと予測されるこが、これに複合的な要因として温度の軸を加えて評価する。アマモでは、地域固有種と普遍種の間で最適温度が異なる可能性があることから温帯における多様性の高いアマモ場の維持機構の解明に繋がることが大いに期待できる。サブテーマ3「予測モデルの開発」:当該海域におけるこれまでの海洋研究開発機構をはじめとする海洋観測の成果や先行研究による各種予測を踏まえて、本研究の結果を解析し、複合的な環境要因の変化に対するサンゴモと海草との応答に関するモデル提示を試行する。

次年度の研究費の使用計画

選定した調査地点において、野外調査を実施する。また、海草・サンゴモの形態・サイズに適合した容器の開発試行など、水温・二酸化炭素濃度を操作した恒温槽実験装置の改良を実施する。現在、実験的に操作した二酸化炭素濃度の計測には、むつ研究所が開発した海洋二酸化炭素センサーを活用しているが、今後はアルカリ度や全炭酸も測定して、より定量的な評価を行う。炭素同位体比分析に関しては、柏の施設の被災により、マシンタイムが確保できず、計画を遂行することができなかった。夏季に装置が復旧次第、早急に分析を行う。当初計画に従い学会にて発表を行い、論文執筆にむけた意見交換を実施する。11月にブラジルで開催されるISBW(International seagrass biology workshop)に参加することを目標に成果のとりまとめを行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 2011年度 日本海洋学会青い海助成事業 成果報告「下北半島周辺の海岸における市民と協働した海洋環境・生物モニタリング体制構築にむけた公開講座・自然観察会」2012

    • 著者名/発表者名
      田中義幸・山崎友資・桐原慎二・渡邉 徹・下舘 章・五十嵐健志・狩野光正・渡邉修一
    • 学会等名
      日本海洋学会
    • 発表場所
      筑波大学
    • 年月日
      2012年3月27日
  • [学会発表] The linkage between biodiversity and ecosystem functions in seagrass beds: a multiple spatial-scale approach in Japan.2011

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Nakaoka, Naoki Tojo, Kentaro Watanabe, Masakazu Hori, Yoshiyuki Tanaka, Takehisa Yamaktia,Napakhwan Whanpetch.
    • 学会等名
      World Conference on Marine Biodiversity,
    • 発表場所
      Aberdeen, Scotland, UK
    • 年月日
      2011年9月28日
  • [学会発表] Broad-scale comparisons of species diversity patterns of seagrass community in Okinawa and the Philippines. Coastal Ecosystems Conservation and Adaptive Management2011

    • 著者名/発表者名
      Masahiro Nakaoka, Kentaro Honda, Yohei Nakamura, Yoshiyuki Tanaka, Gay Amabelle G. Go, Venus Leopardas, Wilfredo H. Uy, Wilfredo L. Campos and Miguel D. Fortes
    • 学会等名
      CCAM 1st National Conference.
    • 発表場所
      University of the Philippines, Diliman
    • 年月日
      2011年6月20日

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公開日: 2013-07-10  

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