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2011 年度 実施状況報告書

河川水系のネットワーク構造に着目した気候変動・人間活動の河川環境への影響評価

研究課題

研究課題/領域番号 23510026
研究機関神戸大学

研究代表者

宮本 仁志  神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50283867)

研究分担者 道奥 康治  神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40127303)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード流域管理 / 河川環境 / 河川水系ネットワーク / 河道位数 / 流量 / 河川水温 / 生態系 / 水資源
研究概要

河川は源流から河口に至るまでツリー状のネットワーク構造でつながる。そのため、流域への様々な環境負荷に対して河川環境の応答を理解するには、そのインパクトが水系ネットワーク上でどのように伝播し、河川環境がどの程度変化を受けるのかを評価することが重要となる。研究代表者らはこれまで、河川水系の幾何構造に着目した解析を行い、流域環境の統合管理のための評価手法として河道位数を用いたネットワーク型の解析モデルが非常に有効であることを明らかにしてきた。本研究課題では、これをもとに気候変動や人間活動の複合インパクトが河川環境に及ぼす影響を明らかにする。今年度は、(1)地理情報解析と試験流域での観測結果を用いた河川水系ネットワークモデルの精緻化、(2)気候変動や土地利用変化などの自然・社会環境変化から生み出される環境インパクトのシナリオ設計、の2つの具体的項目に対して、以下のような研究成果を得た。 (1)(1)河道位数・リンクマグニチュードを介して流域面積から河川流況が非常によく予測できる関係式を構築した。精度向上のために、式中には流域の気候・地質・土地利用の影響が考慮されている。(2)試験流域である揖保川で現地観測を実施し、流域規模で河川水温の時空間変動特性を整理した。さらに、河川水系での水温形成機構に関連して、源流・横流入水温、河畔林や山地地形の日射遮蔽効果をモデル化した。 (2)今年度はおもに土地利用・定住人口など社会環境変化に焦点を絞りシナリオを設計した。河道位数を用いて土地利用・人口の流域分布をフラクタル型の等比数列モデルで表現し、社会環境の変化幅を森林-都市軸、農地-水域軸の二軸をもとに定量的に見積った。試験流域の社会環境状態を一級水系の中で相対的に特徴づけた。さらに、自然環境変化のシナリオ設計のために、IPCC第4次報告書での気候モデルにおける将来降水量・気温の推定値を統計分析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は当初、(1)河川水系の河道位数化指標を用いた流量推定モデルの構築、(2)試験流域における流域規模での河川水温の時空間変動特性の解明、(3)土地利用・定住人口など社会環境変化のシナリオ設計、の3つを目標に研究を推進してきた。研究実績の概要に記述したように、これらは概ね達成できたと考えている。ただし、(2)の河川水温の流域変動特性については、現地観測を中心にフィールドワークを重視したために、当初予定していた気象擾乱やダム出水時のインパクト、水田利用による影響、降雪・融雪時の水温変化など、より踏み込んだ分析までには至っていない。その一方で、当初は次年度に予定していた、源流・横流入水温、河畔林や山地地形の日射遮蔽効果などのモデル化および、自然環境変化のシナリオ設計に関する初期検討を実施した。これらに関しては当初計画以上の進展をみている。以上より、今年度の総合的な達成度としては、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

平成24年度では、まず、今年度に整理した試験流域での観測データを用いて、河川水温の年々変動や気象擾乱による変化、出水時のインパクト、灌漑期の水田利用による変化、降雪・融雪時の水温変動など、流域規模での河川水温の時空間変動特性を実証的に明らかにする。さらに、モデル化された源流・横流入水温や植生日射遮蔽効果を河川水系のネットワークモデルに導入し、河川ネットワーク上の水温形成過程において卓越する影響因子を流域規模で評価する。一方、環境インパクトのシナリオ設計に関しては、平成24年度は気候変動による自然環境変化のシナリオを設計する。気候変動の影響に関するこれまでの検討成果を発展させて、試験流域近郊での将来の気候変動の振幅を統計的に明らかにし、自然環境変化のシナリオを作成する。 平成25年度には、それまでの研究成果をもとにして、河川水系のネットワークモデルを用いて気候変動・人間活動が河川環境へ及ぼす影響を評価する。自然・社会環境変化のシナリオに、ダム・堰などの社会基盤整備の有無を加えた統合シナリオを作成し、再構築された新しい河川水系ネットワークモデルを用いて環境インパクトに対する流量・河川水温の応答を明らかにする。降水量・気温などの気候変化に対する応答はもとより、水田・農耕地などの土地利用変化やダム・堰の有無などが複合的に作用する場合の環境応答を系統だてて評価し、ネットワーク上での各要因の相対的な影響を明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費は主に、(1)観測データ分析、(2)流域観測、(3)成果発表、(4)その他経費で構成される。(1)観測データ分析に関する研究費は、ワークステーションの購入に充てられるが、これは今年度予算計上していたものである。研究実績の概要で記述したように、今年度は河川水温の現地観測などフィールドワークに重点をおいたため詳細なデータ解析まで研究が進捗せず、当該予算は未執行であった。次年度は当初より観測データ分析を実施するため、早期にワークステーションを購入する。(2)流域観測に関する研究費は、試験流域に約30カ所ある観測サイトについて、年間4回の観測計画を円滑に実行するために必要な旅費、消耗品、観測補助・データ整理謝金、などを予算計上している。(3)研究成果発表に関する研究費は、研究成果を国内外の学会にて報告する経費として旅費を、紙上発表するための経費として英語論文校閲費、研究成果発表費用を予算計上している。(4)その他の研究費は、研究実施に必要な論文資料の別刷費、PC関連消耗品費、会議費、印刷費などを予算計上している。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] 気候・地質・土地利用の影響を考慮したリンクマグニチュードによる河川水系の流況推定2012

    • 著者名/発表者名
      石田和也, 宮本仁志
    • 雑誌名

      土木学会論文集B1(水工学)

      巻: Vol.68, No.4 ページ: I_487-I_492

    • 査読あり
  • [雑誌論文] NDVIによる日射遮蔽と流量推定の補正による河川水温ネットワークモデルの改良2012

    • 著者名/発表者名
      前羽 洋, 宮本仁志, 中山和也
    • 雑誌名

      土木学会論文集B1(水工学)

      巻: Vol.68, No.4 ページ: I_733-I_738

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 植生動態モデルとリンクマグニチュードによる河川水系複数河道での樹林化傾向の確率評価2012

    • 著者名/発表者名
      木村 諒, 宮本仁志, 盛岡淳二
    • 雑誌名

      土木学会論文集B1(水工学)

      巻: Vol.68, No.4 ページ: I_727-I_732

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Basin-Wide Distribution of Land Use and Human Population: Stream Order Modeling and River Basin Classification in Japan2011

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto, H., Hashimoto, T., and Michioku, K.
    • 雑誌名

      Environmental Management

      巻: Vol.47, No.5 ページ: pp.885-898

    • DOI

      doi:10.1007/s00267-011-9653-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A stream order network model for predicting basin-wide distribution of stream temperatures2011

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto, H., Michioku, K., Maeba, H., and Nakayama, K.
    • 雑誌名

      Proceedings of the 34th International Association of Hydraulic Engineering and Research Congress

      巻: Proc. CD-ROM ページ: pp.3247-3254

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A stochastic model for tree vegetation dynamics in interaction with flood events2011

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto, H., Kanda, K., Michioku, K., Morioka, J., Uotani, T., Ohchi, Y., and Aga, K.
    • 雑誌名

      Proceedings of the 34th International Association of Hydraulic Engineering and Research Congress

      巻: Proc. CD-ROM ページ: pp.3089-3096

    • 査読あり
  • [学会発表] 気象・地質・土地利用を考慮したリンクマグニチュードによる河川流量の推定モデル2011

    • 著者名/発表者名
      宮本仁志, 石田和也, 道奥康治
    • 学会等名
      第66回土木学会年次学術講演会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      20110907-09
  • [学会発表] リモートセンシングに基づく河道内生態環境の定量分析2011

    • 著者名/発表者名
      辻本晋吾, 宮本仁志
    • 学会等名
      平成23年度土木学会関西支部年次学術講演会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      2011-06-12
  • [学会発表] 揖保川河川水温の流域変動特性に関する主成分分析

    • 著者名/発表者名
      浦野仁志, 前羽 洋, 中山和也, 宮本仁志, 道奥康治
    • 学会等名
      第66回土木学会年次学術講演会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      平成23年9月7-9日
  • [学会発表] 加古川中・下流部の複数河道における樹木消長の確率評価

    • 著者名/発表者名
      木村 諒, 盛岡淳二, 宮本仁志, 神田佳一, 魚谷拓矢, 道奥康治, 大地洋平, 阿河一穂
    • 学会等名
      第66回土木学会年次学術講演会
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      平成23年9月7-9日
  • [学会発表] 流域地形則に基づく河川流量ネットワークモデルの構築

    • 著者名/発表者名
      石田和也, 宮本仁志, 道奥康治
    • 学会等名
      平成23年度土木学会関西支部年次学術講演会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      平成23年6月12日
  • [学会発表] NDVIと平衡地温を用いた河川水温ネットワークモデルの改良

    • 著者名/発表者名
      中山和也, 宮本仁志, 前羽洋, 浦野仁志, 道奥康治
    • 学会等名
      平成23年度土木学会関西支部年次学術講演会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      平成23年6月12日
  • [学会発表] 多変量解析を用いた河川水温の流域変動特性の検討

    • 著者名/発表者名
      浦野仁志, 中山和也, 前羽洋, 宮本仁志, 道奥康治
    • 学会等名
      平成23年度土木学会関西支部年次学術講演会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      平成23年6月12日
  • [学会発表] 樹林消長評価のための流量時系列シミュレーションの水系全体への拡張

    • 著者名/発表者名
      木村諒, 盛岡淳二, 宮本仁志, 神田佳一, 魚谷拓矢, 道奥康治, 大地洋平, 阿河一穂, 檜達也
    • 学会等名
      平成23年度土木学会関西支部年次学術講演会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      平成23年6月12日
  • [学会発表] 樹木抵抗の河川流解析を組込んだ植生動態モデル

    • 著者名/発表者名
      盛岡淳二, 木村諒, 阿河一穂, 大地洋平, 檜達也, 宮本仁志, 道奥康治, 神田佳一, 魚谷拓矢
    • 学会等名
      平成23年度土木学会関西支部年次学術講演会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      平成23年6月12日

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公開日: 2013-07-10  

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