本研究の目的は黄砂が人体の健康に及ぼす影響を評価である。最終年度は健常者50人を対象とし、前年度から継続しているインターネットを用いたウェブ式アンケートにより自覚症状調査を実施した。黄砂の前後の自覚症状の変化を調査するとともに、黄砂粒子が多く含まれる大気中浮遊粒子状物質やPM2.5などの大気汚染物質、花粉、気象データなどの因子と自覚症状との関連性を例年のように検討した。さらに、同意の得られた研究協力者25人を対象に血清中の特異的および非特異的免疫グロブリンE値を測定し、黄砂時の自覚症状との関連性を検討した。この結果、一部の食物アレルギーを持つ対象者で黄砂時に鼻に関する自覚症状が悪化しやすいことが判明し、国際学会にて報告を行った。 前年度までに、黄砂時に悪化する皮膚症状は金属アレルギーを代表とする4型アレルギー反応と関連性があることを国内・国際学会および英文雑誌において発表してきた。最終年度の結果を含めて総合的に判断すると、黄砂時にあらわれる自覚症状には1型や4型アレルギーなど複数の機序が関与している可能性が示唆された。
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