研究課題
大気二酸化炭素濃度の増大に伴う海洋酸性化がサンゴ石灰化に与える影響について研究を行った。サンゴが生息している海水のpHが低下し、アラゴナイト(炭酸カルシウム)に対する飽和度(Ω)が低下するとサンゴ石灰化速度の低下が無機化学(速度論)的見地から予想できる。したがって、沖縄、タイのサンゴ礁観測調査を行い海水の化学分析からサンゴ礁の石灰化と海水のアラゴナイトに対する飽和度(Ω)の関係に関するデータを得た。琉球大学の実験室で、pHを変化させた海水を使ってサンゴ飼育実験を行った。また、沖縄のサンゴ礁タイドプールをフィールドとして、塩酸を使って海水のpHを低下させ、それに伴うアルカリ度の低下という条件下でサンゴ礁での石灰化速度を測定した。その結果、実験室のサンゴ飼育実験からは、海水pHの低下、すなわちアラゴナイトに対する飽和(Ω)の低下に伴って、サンゴ石灰化は低下することが明らかになった。沖縄本島のサンゴ礁での実験でも、室内飼育実験と同様の結果が得られた。さらに、サンゴ骨格結晶に含まれる微元素および同位体分析からサンゴが生息していた海の環境(温度、pHなど)指標となる元素、同位体に関する検討を行った。その結果、サンゴ骨格中フッ素、ホウ素(海水中には陰イオンとして溶存する)がサンゴ生息海水の炭酸イオン(pHとリンク)に規定される可能性があるデータを得た。フッ素含量とpHに関する研究成果は、国際学術雑誌へ論文として公表した。その論文作成過程で、サンゴ骨格中の陰イオンと海水pHの関係は、研究例がなく、今後の研究課題であることが明らかになった。本研究の1つの目的はサンゴ骨格の化学、同位体分析からサンゴが生息していたサンゴ礁海水のpHおよびサンゴ石灰化の時のpHを推定することであり、そのような研究を通して、海水酸性化がサンゴ石灰化に与える影響を定量的に評価できるよう研究を展開した。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Marine Chemistry
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Journal of Geochemical Exploration
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