研究課題/領域番号 |
23510031
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
坂本 正樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (20580070)
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研究分担者 |
永田 貴丸 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, その他部局等, 研究員 (50454624)
真野 浩行 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (40462494)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 水圏生態系 / 生態系機能 / 食物網 / 農薬 / 影響評価 |
研究概要 |
本研究の目的は,「微生物,生産者,低次消費者,高次消費者から構成される水圏生態系の構造と機能が,低濃度の農薬(殺菌剤,除草剤,殺虫剤)の曝露によってどのように変化するのかを明らかにすること」である.初年度は,急性・慢性毒性試験を行い,各分類群の生物に対する農薬の影響濃度を調べた. これらの結果は,次年度にメソコズム実験(群集レベル実験)を実施する際に使用する農薬濃度を決める基礎データとなる.(1)低次消費者(動物プランクトン)への影響: 6種類の動物プランクトン(アミメネコゼミジンコ,ニセネコゼミジンコ,カブトミジンコ,マギレミジンコ,タマミジンコ,スカシタマミジンコ)について,殺虫剤フェニトロチオンと界面活性剤ノニルフェノールの急性毒性試験を行った.また,アミメネコゼミジンコとタマミジンコの個体群増殖率に対するフェニトロチオンの毒性影響を調査するために慢性毒性試験を行った.さらに,3種の動物プランクトン(オオミジンコ,カブトミジンコ,ゾウミジンコ)について,殺虫剤メソミル,除草剤シメトリン,殺菌剤イプロベンホスの急性毒性試験を行い,各農薬に対する動物プランクトン種間での感受性差についての基礎データを蓄積することができた.(2)高次消費者(魚類)への影響:毒性試験の標準魚類であるメダカを用い,除草剤シメトリン,殺虫剤フェニトロチオンの急性毒性試験を行った.本研究で高次消費者として着目するワカサギについては,卵が4月~5月にしか手に入らない.提供元である長野県水産試験場から送付され次第,孵化率と稚仔魚の生存に及ぼす農薬の影響を評価する.(3)生産者(藻類)及び微生物(細菌,原生動物)への影響:藻類は標準試験生物であるムレミカヅキモ及び,環境中で普遍的に見られるイカダモについて,各農薬を用いた試験を行う.これまでに試験株の入手と培養を開始した.微生物についても試験を順次開始する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は全ての生物分類群について,急性毒性試験及び慢性毒性試験(魚類を除く)を行い,生存と増殖に及ぼす各農薬の影響を評価する計画だった.しかし,研究分担者2名ともに所属機関の変更があり,継続的に試験を行うことが困難だった.ただし,実験の実施担当などを調整しなおし,生産者と微生物以外の試験を順調に進めることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
種レベルの試験はある程度順調に進んでいる.H24年度はこれを完遂させ,さらに相互作用への影響評価とメソコズム実験(群集レベル実験)を行う.研究分担者の所属機関変更に伴い,群集レベル実験は富山県立大学(代表者)で行うことになった.実験サンプルの分析の担当をメンバー内で振り分け,効率よい分析が可能になると期待される.H24年度は得られた成果の国際誌への論文投稿を積極的に行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
メソコズム実験を行うための大型水槽(320 L容量)を購入し,富山県立大学で実験を行う.水槽1基がおよそ1万2千円で,これを15基購入するため,その分の予算を代表者に配分した.安定同位体分析等にかかる費用には分担者(永田)の前年度未使用額をあてる.その他に関しては,当初の計画通りに進める.
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