研究課題/領域番号 |
23510031
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
坂本 正樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (20580070)
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研究分担者 |
永田 貴丸 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, その他部局等, 研究員 (50454624)
真野 浩行 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (40462494)
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キーワード | 水圏生態系 / 農薬 / 食物網 / 生態影響評価 / マイクロコズム |
研究概要 |
本研究では,「微生物,生産者,低次消費者,高次消費者から構成される水圏生態系の構造と機能が,低濃度の農薬(殺菌剤,除草剤,殺虫剤)の曝露によってどのように変化するのか」を明らかにするために生態系機能(一次生産量,食物網構造,高次消費者の成長量)をエンドポイントとした評価の必要性を検討した. まず,基礎データを得るために藻類2種,ミジンコ3種,魚類1種について,除草剤(シメトリン),殺虫剤(メソミル,フェニトロチオン),殺菌剤(イプロベンフォス)の毒性評価を行った.その結果をもとに,藻類とミジンコを構成種とした単純なマイクロコズム実験(1-L規模)を行い,さらに魚類(モツゴ稚魚)を含めた屋外メソコズム実験(300-L規模)を実施し,作用機序の異なる農薬の影響を調べた. マイクロコズム実験では,藻類(ムレミカヅキモ)の増殖に対する72-h EC50とミジンコ(オオミジンコ)に対する48-h EC50のうち低い値の0.5-2倍になるように各農薬濃度を設定し,2週間の実験を行った.その結果,除草剤処理区では,藻類の光合成活性阻害作用によって溶存酸素濃度が著しく低下し,それがミジンコの生存率に強い影響を及ぼすことがわかった.これは,既存の毒性試験では検出できない農薬の間接影響の一例である. 屋外メソコズム実験では,各種農薬をデータベースから算出したHC5もしくはPNECの濃度で投与した.この実験では,各生物の現存量や体成長への影響のみではなく,炭素・窒素安定同位体解析により,食物網構造に及ぼす影響の評価を行った.その結果,低濃度の農薬投与でも淡水生態系構造に強い影響を及ぼしうることが明らかになった. 上記の研究結果は国内外の学会で発表済みであり,現在は論文を投稿準備中である.また,その他に20-L規模でのマイクロコズム実験,動物プランクトンの競争実験等を行い,これらは学術誌に出版されている.
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