研究課題/領域番号 |
23510034
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
熊田 英峰 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (60318194)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ジヒドロレジン酸 / タイヤ摩耗粉塵 / 路上粉塵 / 大気エアロゾル |
研究概要 |
初年度はタイヤ及び環境試料中に存在するレジン酸の同定とその定量的な分析方法を確立を目的とした。ジヒドロレジン酸の精製、単離、構造解析:レジン酸の不均化混合物を和光純薬工業から得た。ELSDは導入後、リークセンサーの異常により安定して使用することができなかったため、これを使用せず、メチル誘導体化した混合物をGC/MSで分析しEIスペクトルを解析、さらに相対保持指標を文献値と比較、暫定的に化合物を同定した。その結果、8-isopimaren-18-oic acid (I), 8-pimaren-18-oic acid (II), 13β(H)-abieten-18-oic acid (III), and 13α(H)-abiet-8-en-18-oic acid (IV)の4種のジヒドロレジン酸が含まれることが確認された。タイヤおよび環境試料中に存在するレジン酸類の同定:市販のタイヤゴムや路上粉塵など測定したほぼ全ての試料にデヒドロアビエチン酸(V)、アビエチン酸(VI)の他に上記I-IVが含まれることを明らかとした。タイヤおよび環境試料中のレジン酸類の定量的分析方法の確立:環境試料中のレジン酸を超音波抽出し、抽出液をBSTFAでTMS化してGC/MSで分析する方法を確立した。I-Vの比標準偏差は7-10%、全環境試料を分析する際の内部標準物質の添加回収率は78-136%だった。以下は、2年度目以降の実施予定項目であったが前倒しで実施した。確立した分析法を用いて、タイヤ、2005-2008年に採取した路上粉塵、大気浮遊粉塵のアーカイブ試料を分析した結果、いずれからもI-VIが検出された。また、マツ科植物樹脂、その工業変性物である不均化ロジン、マツ科植物燃焼煙などの分析結果から、ジヒドロレジン酸I-IVが不均化ロジンを使用した工業製品に特異的な成分であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の研究目的に掲げた化合物の同定と分析方法の確立を、検討課題を残しつつも達成することができた。さらに、翌年度以降の実施を予定していた、都市環境中のレジン酸の分布について、アーカイブ試料を用いて十分な知見を得ることができた。またレジン酸の起源特異性の検討も実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、HPLC-ELSDを用いたレジン酸の精製を実施するとともに、以下の項目を行っていく。現在採用している分析方法ではカルボキシル基のキャッピングにTMS基を導入している。TMSエステルは加水分解されやすいので、試料精製の方法が制限される。そこでBligh & Dyer法、ソックスレー抽出、加圧抽出など異なる抽出方法の比較、TMS化とメチル化の比較を行い、分析方法のさらなる高精度化を目指す。また、環境試料については、現在の環境を反映する試料の分析を進めるとともに、国内の他地域、海外の試料についても分析をすすめ、広範囲の環境についてレジン酸の分布を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に導入したELSDの調整に時間がかかり、ELSDを用いたレジン酸の精製を十分に実施できず、残予算が発生した。今後、HPLC-ELSDを用いたレジン酸の精製を実施するために、この残予算を使用する。
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