研究課題
レジン酸類の分析方法:環境試料からのレジン酸類の抽出方法とレジン酸類のカルボキシル基のキャッピング方法の検討を含めた試料精製方法のブラッシュアップに着手した。ジクロロメタンを用いて加圧溶媒抽出することで、十分な抽出効率を得られることを確認し、抽出操作時間と使用溶媒量の削減を達成した。抽出液をアルカリ鹸化後にメチル誘導体化し、シリカゲルカラムでモノカルボン酸エステルを分離する方法を確立した。分析対象とするジヒドロレジン酸(H2RA)I-IVおよびデヒドロアビエチン酸(DHA)のRSDは8-10%、クリーンアップスパイクの回収率は平均104%だった。キャッピングをメチル化に切り替えることで低濃度試料のレジン酸組成の精度を上げることに成功した。海外試料の分析:ハノイ(ベトナム)、北京(中国)で採取した粉塵やエアロゾル試料を分析した結果、全試料からH2RA、DHAおよびその他のレジン酸類が検出された。都市により、H2RAとその他のレジン酸類のタイムトレンドの類似性が異なることが明らかとなった。その原因については翌年度に解析を進めることとした。H2RAの組成は前年度に確認した不均化ロジンを使用したゴム製品と類似していることを確認した。これにより海外においてもタイヤ摩耗粉塵をはじめとするゴム製品の環境放出のマーカーとしてH2RAが有効であることが示された。また、海外のエアロゾル試料については、タイヤゴム由来と従来考えられているZnなどの金属元素のタイムトレンドを把握するために、XDXRF装置を用いた元素分析を行った。このデータはH2RAおよびその他のレジン酸類のタイムトレンドの解析に使う予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
環境試料中レジン酸類の分析方法の検討については、前処理方法やカルボキシル基のキャッピング方法、抽出方法の最適化まで含めてほぼ当初の計画通りに実施し、H2RAの定量と組成解析を高精度化することができた。環境中のH2RAはその他の極性炭化水素類よりも濃度が低いため、妨害物質を十分に除去できる前処理方法の確立は環境分析を進める上で重要な達成と言える。また、海外試料の分析についても、測定試料数は限られるが重要なデータを得ることができた。
レジン酸類が世界の様々な地域で検出されることが分かり、マーカー物質としての適用可能性が広がったため、その有効性を物理化学的特性の面から検証する実験に着手する。具体的には、H2RAの主要キャリアである粉塵粒子からの溶出試験を実施しH2RA I-IVの環境動態を予測するためのデータを取得する。また、溶出したH2RAの土壌浸透の可能性についても実験的に確認する。環境試料については、国内の他地域、海外の試料について引き続き分析をすすめ、広範囲の環境についてレジン酸類の分布把握に努める。またH2RAとその他のレジン酸類のタイムトレンドの支配要因を解析する。
環境試料中レジン酸類の分析方法のブラッシュアップに当初計画以上の期間を費やしため、現在の環境試料の採取や分析については部分的な計画遂行に留まり残予算が発生した。未遂行の環境試料採取、分析を行うための消耗品の購入と、分析補助者への謝金に使用する。
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Aerosol and Air Quality Research
巻: 13(2) ページ: 436-449
ぶんせき
巻: 2012(11) ページ: 652-653