研究課題/領域番号 |
23510036
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
青野 光子 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (10202491)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 光化学オキシダント / オゾン / 植物影響 / ストレス診断 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
わが国では多くの大気汚染問題が改善されてきたが、光化学オキシダント(オゾン)については、逆に汚染の高濃度化、広域化が進んでおり、人間の健康はもとより、森林や農作物など植物への深刻な悪影響が強く懸念されている。本研究の目的は、植物が生育環境中のオゾンによって受ける影響を正確かつ迅速・簡便に把握するためのストレス診断手法の開発である。まずはオゾン指標植物であるアサガオや、オゾンによる衰退が示唆されているブナ等の植物を用い、オゾンに応答して発現する遺伝子の情報を得て、実際の野外に生育している植物の影響評価に利用可能な、分子的機構に裏付けられしかも比較的安価に実施できる手法の確立を目指している。 具体的には、野外環境中で生育する上記植物種におけるオゾンストレス診断に最適なマーカー遺伝子を決定し、それらを用いた遺伝子発現によるオゾンストレス診断手法を開発するために、各植物種のオゾンストレスのマーカーの候補となるオゾン応答遺伝子を選定し、それらの遺伝子の発現の調査を行なっている。すなわち、野外環境中で生育する植物からRNAを調整し、逆転写PCRによってマーカー遺伝子の発現の程度を調べることで、どのような遺伝子がどの程度発現しているかという情報を得て、植物がオゾンストレスを受けているかどうかの評価、及び受けている場合はその程度を評価する手法を開発しようとしている。特に、逆転写PCRでは、電気泳動画像のフリーソフトによる解析や微量分光光度計を用いる方法など、比較的安価に実施できるPCR産物の定量方法を検討している。 平成23年度は、主としてガス暴露チャンバー内でオゾン暴露したアサガオ、ブナ、ホウレンソウにおけるオゾン応答遺伝子群の検索、ならびに野外で栽培した植物試料の採取・保存を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は福島第一原発事故の影響による実験施設の節電対応が必須であり、ガス暴露チャンバーや材料提供温室の例年にない長期間の停止を余儀なくされ、実験材料の植物の育成やオゾンガス暴露が滞ったため、目的の達成度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降も節電対応が予想されるため、短期間での効率的な植物の育成やガス暴露実験を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は前述の理由により遺伝子解析を行う植物の試料数が当初予定より少なくなったため、試薬の購入数が減り、5万円が未使用となったが、この分は平成24年度の試料の解析用試薬として使用予定である。
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