研究課題/領域番号 |
23510041
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高瀬 浩二 静岡大学, 人文学部, 准教授 (20350358)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 経済統計学 / 環境政策 / 廃棄物処理 / LCA / 産業連関分析 |
研究概要 |
廃棄及び排せつを含む経済学的な消費者行動モデルの開発を目指し,伝統的消費者理論の文脈での廃棄物,排せつ及び環境負荷の扱いについての文献サーベイを行い,本研究で開発されるモデルの概念整理を行った。これらの文献調査をもとに,伝統的な経済学における消費者理論であまり扱われていない廃棄物組成別排出を説明する消費・廃棄・排せつモデルを構築する準備を行った。同時に,本研究のもととなるデータ整備作業を行った。家計消費部門について,さらに多くの情報を集め,平均的家計からの組成別の廃棄物排出・再資源化・処理量,それらの組成等を定量的に把握できるよう,データを整備中である。また,本研究の基礎データの一つである廃棄物産業連関表(WIO表)の拡張を目指し,以下の検討を行った。1. 農業部門で化学肥料を堆肥へ振替することによって,農地中に炭素を貯留し,経済全体でのCO2排出量を減らす政策が政府で検討されている。従来型の食品LCA(ライフサイクルアセスメント)では,このような炭素貯留が考慮されていないため,食生活に起因する環境負荷が過大評価されている可能性がある。この問題点を解決すべく,農業部門による炭素貯留効果を考慮した勘定体系の推計と分析モデルの開発を行った。公表されている産業連関表をベースとし,農林水産省の資料,農業関連の実験データ等を組み合わせ,農地の炭素貯留効果を考慮するための拡張型産業連関表の推計を行った。2. 廃棄物産業連関モデルのバイオマスへの拡張を目指し,国産木材と輸入木材の代替の技術的可能性と環境影響評価の方法について検討を行った。住宅用建材の国産化と輸入代替によって、国内森林の若返りおよび海外の森林保全によってもたらされる効果の大きさとその環境保全効果を試算した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析モデルの概念整理および基礎データの収集と整理について,おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
家計の消費・廃棄・排せつ行動を表す経済学的な消費モデルと既存の廃棄物産業連関モデル(WIO基本モデル)とを統合し,消費・廃棄・排せつ分析用WIOモデルを作成する。理論モデルを用いたシミュレーションを可能とするため,計算プログラムの作成と運用を順次行う。分析のもととなるデータ整備については,継続的に行う予定である。これらを用い,一般家庭の行動,すなわち,ライフスタイルの変化によって直接・間接に引き起こされる総合的経済・環境効果の増減の定量評価を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
廃棄及び排せつを含む経済学的な消費モデルの開発を目指し,既存研究の文献サーベイを行う必要がある。この目的のため,廃棄物関連図書・資料費を計上。また,家計消費および廃棄物排出および管理に関連するデータを収集し整理するため,データソフト購入費および関連図書・資料を計上。さらに,データの精緻化のために実地調査や聞き取りを行う目的で調査旅費を計上。データ入力作業と資料整理の効率化のために研究補助(謝金)及びコンピュータ関連消耗品を計上。分析用プログラムを作成するための数値計算ソフトを整備するため,ソフトウェア購入費を計上。成果報告および国内外の研究動向の情報収集のため,国内旅費を計上。
|