近年,地球の自然環境は激変している。例えば,大気や海洋の平均温度は世界各地で継続的な上昇傾向を示しており,これに伴う海水面の上昇や,異常降雨による洪水,旱魃,酷暑,砂漠化や強力なハリケーン・台風の増加などが世界各地で観測され,自然生態系や人類の活動への悪影響が懸念されている。こうした気候変動,あるいは気候変化と呼ばれる諸現象は,地球システムが本来的に有する自然由来の内部要因によるものと人為的な外部要因によるものに分けられるが,温暖化現象に関しては,産業革命以降の人間活動等に伴い排出された二酸化炭素などの温室効果ガスが主因とする説が有力であり,長期的な視野に立っての温室効果ガスの削減が急務である。 温暖化現象が関係しているとされる海水温上昇や,海水の熱膨張に伴う海面上昇などについては,「こんなところで南方のヒョウモンダコが」や「南太平洋の島々が悲鳴」などと新聞やテレビで耳にする機会も多く,水産業への影響についても様々な切り口から調査や研究が進みつつある。一方,同様に大きな問題と考えられる局所的な集中豪雨の増加や,二酸化炭素の増加に起因する海洋酸性化が,養殖業をはじめとする水産業に与える影響については,まとまった報告はまだほとんどなされていない。本研究では世界各地の状況を調査し,共通する問題の中からより重要と考えられる温暖化の影響による現象をいくつか抽出して実験室での試験によって海棲生物に与えるその影響のインパクトおよびそのメカニズムを明らかにすることとして実施した。その結果今後の対策につながるいくつかの新たな知見が得られた。
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