研究課題
地球温暖化問題の解決に向けて、グローバルなCO2排出量の削減が急務となっている。このような状況のもと、低炭素社会の実現に向けた取組の進んだ国と、そうでない国の産業構造の実態を把握し、炭素集約的な国に炭素粗放的な産業構造の構築に向けた具体的な政策提言をしていく必要がある。そこで本研究では、国際産業連関理論と応用数学の分野で近年急速に発展しているスペクトラルグラフ理論を融合することによって、各国の産業間生産連鎖構造からCO2排出集約的な産業クラスター(以降、炭素クラスター)を検出する方法の開発を試みるだけでなく、地域間(国際間)生産連鎖構造(貿易構造)から炭素クラスターを検出する方法の開発を行うことを第一の目的とする。さらに、当該国において検出された炭素クラスターが他国の炭素粗放的な産業クラスターに移行(変化)することによって環境にどのような影響を与えるのか定量的に評価することを第二の目的とする。初年度は、スペクトラルグラフ分析と非負行列因子分解分析を併用することによって、当該国における個別商品のサプライチェーンから炭素クラスターを検出する方法を開発することに成功した。また、その手法の頑健性を確認するため、我が国における自動車サプライチェーンを対象に実証分析を行った結果、19個の炭素クラスターを定量的かつ客観的に検出することができた。またその19個のクラスターの中でも特に自動車部品クラスター、自動車車体クラスター、ガラス製品クラスター、タイヤクラスターの排出削減が決定的に重要であることを明らかにしている。さらに、クラスター内における構造変化を分析するための手法の開発も行った。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、固有値分解に大きく依存しているスペクトラルグラフ分析の弱点を克服するべく、非負行列因子分解法を併用した、産業クラスター分析法の開発を行い、その有用性を確認することができた。本手法を、既に整備済みの環境アジア国際産業連関表に適用することによって、国際間の商品サプライチェーンから炭素クラスターを定量的かつ客観的に検出することが可能となる。本分析結果から具体的な政策提言に繋がることが大いに期待できる。本研究論文はまだ刊行されてはいないが、現在査読中の英語論文が2本あることから、今年度には、研究業績につながると考えている。以上の理由から、本研究プロジェクトはおおむね順調に進展していると考えている。
今後は、環境アジア国際産業連関表に基づく空間分析と初年度に開発した産業クラスター分析を組み合わせ、国際間でのクラスターの相互依存関係の特徴を明らかにし、グローバルなCO2排出量を削減するための支援策を検討することである。また現在査読中である2本の英語論文の刊行に全力を尽くすつもりである。また本研究成果は、国内外の学会において積極的に公表していく。
国際産業連関分析学会、エコバランス国際会議、環太平洋産業連関分析学会、環境経済・政策学会、LCA学会など国内外の学会の研究発表会で積極的に研究成果を発信していくために、旅費として使用させていただきたい。また、ノートパソコン、ネットワーク科学の関連書籍の購入ために使用させていただきたい。その他としては、国際的な炭素クラスターの分析に関する英語論文の英文校閲代として使用させていただきたい。
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日本LCA学会誌
巻: 8 ページ: 26-36
Environmental Science & Technology
巻: 46 ページ: 155-163
ISIJ International
巻: 51 ページ: 1934-1939
http://www.en.kyushu-u.ac.jp/kagawa/top.html