研究課題/領域番号 |
23510046
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加河 茂美 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (20353534)
|
研究分担者 |
近藤 康之 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80313584)
南齋 規介 独立行政法人国立環境研究所, 循環型社会・廃棄物研究センター, 主任研究員 (80391134)
|
キーワード | 地球温暖化 / CO2排出削減 / 国際貿易 / 産業クラスター分析 / 国際産業連関分析 |
研究概要 |
2008年5月に,日本政府はエネルギー使用の合理化に関する法律の改正を行った。改正前は,工場・事業所ごとに年間エネルギー使用量(原油換算値)を国に報告し,エネルギー管理指定工場の指定を受けなければいけなかったが,改正後は,工場,事業所,営業所といったサプライチェーン全体に責任を持つ企業が当該サプライチェーン全体で消費されたエネルギー消費量を国に報告しなければいけなくなった。つまり,企業は,工場単体での省エネルギーだけに目を向けるだけでなく,素材調達,素材加工,部品製造,完成品製造,営業,販売といった一連の製品ライフサイクル全体を通した省エネルギーに注力しなければいけない。当然,政府そして企業は,限られた資源の中で最も効果的にエネルギー削減を行うために,複雑に絡み合う製品ライフサイクルのどの部分をターゲットにすればよいのか客観的に意志決定する必要が出てくる。平成24年度は、Ding et al.(2004)によって提案された非負行列因子分解分析に基づくクラスター解析法と産業連関法を組み合わせより精度の高い非負行列因子分解に基づく産業クラスター分析法の開発に成功した。また、平成23年度に開発した固有値分解に基づく産業クラスター分析法との定量的な比較を行い、手法の頑健性について評価した。平成24年度は、乗用車のサプライチェーンを研究対象にし、CO2集約的な産業クラスターを検出することに成功している。本研究で提案したCO2クラスターの検出方法を利用することによって,製品サプライチェーンあるいは経済システム全体から排出集約度の高い産業クラスターを見つけることができるだけでなく,クラスター内の排出集約度を計測することによって排出削減対策の優先順位を付けることが可能となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
離散選択問題として定式化されるクラスター検出問題を解くには、どうしても緩和問題として定式化せざるを得なく、その緩和問題として複数の解法が提案されている。それらすべての解法の頑健性をまず精査する必要があり、当該年度では、国際比較分析に入る前に、その頑健性の確認を行った。その結果、非負行列因子分解を利用した解法が数理的に最も適した緩和法であることを確認し、その解法を実際の産業ネットワークデータに適用し、クラスター結果の検証も行っている。平成23年度の研究成果は、Economic Systems Research誌(2011 IMPACT FACTOR:2.429)に掲載が決定しており、平成24年度の成果はSocial Networks誌(2011 IMPACT FACTOR:2.931)において現在改訂後再査読中である。このように着実に論文掲載に向けて努力をしているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
実証分析をさらに進め、残り1年間で、“各国のクラスター内の生産連鎖が持つ固有の特徴”、“各国のクラスター内の技術移行(変化)による影響”、“国際間クラスター間の相互依存関係の特徴”を明らかにするだけでなく、特に中国をはじめとしたアジア地域全体のCO2排出量を効果的に削減するための具体的な支援策を提言する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究打ち合わせ費用(国内旅費)に関する当初の支出計画と実際の支払い額との差によって生じているものであり、引き続き、打ち合わせ用の予算(国内旅費)として利用させていただきます。
|