研究課題/領域番号 |
23510051
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
筑井 麻紀子 東京国際大学, 商学部, 教授 (40275798)
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キーワード | 環境経済 / 地域間比較研究 / 中国 / 政策シミュレーション / 経済政策 / 計量経済学 / 地域経済学 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の目的としては、日中地域間廃棄物産業連関表(日中WIO表)の推計を通じて、日本と中国が産業面のみならず廃棄物の排出や処理を含めてお互いに与え合う影響を推計することにある。平成25年度は日中WIO表の日本に関連する部分と中国に関連する部分の作成作業を進めた。日本に関連する部分は研究代表者が、中国に関連する部分は、研究協力者の林晨(山東大学経済研究院准教授)が主導的な立場に立って取り組んだ。財・サービス部門は経済産業省が作成した2007年日中国際産業連関表(77部門)をベースとして推計を行った。日本に関連する部分に関しては、平成25年度は羽原他(2002)の方法で事業系一般廃棄物の推計を行った。廃棄物排出部門については、日本部分は産業部門30部門、産廃19分類、事業系一般廃棄物17分類で推計が完了しており、中国部分は産業部門42部門、産廃4分類、事業系一般廃棄物29分類による推計が完了している。平成25年度は中間的な報告として、日本部分の推計と中国部分の推計を産業部門30部門、事業系一般廃棄物17分類に統合して、比較を行った。中国の産廃分類は日本の産廃分類より大きく異なり、分類数が少ないため、単純な比較は困難であるが、総量としては約5.6倍に上る14.5億トンの産廃が排出されている。それに対し、事業系一般廃棄物に関しては、中国の排出総量は日本の2.6倍に上り、特に厨芥、プラスチック、紙類、金属の排出量が多く、これらの廃棄物は製造業から排出されていた。また、中国の輸出財の生産には大量の廃棄物排出を伴うことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は日中地域間廃棄物産業連関表(日中WIO表)の日本側及び中国側の財・サービス部門、廃棄物排出部門に関する推計がほぼ完了している。廃棄物排出部門については、日本部分では産業廃棄物、事業系廃棄物の推計作業が完了しており、これらに関しては、リサイクル前の粗排出量、リサイクル量である粗投入量、リサイクルを考慮した排出量である純排出量が推計されている。中国部分では粗排出量の推計のみであるが、これは現時点で入手可能な統計資料の限界でもあり、どのようにリサイクル量を推計していくかは今後の課題である。財・サービス部門と産業部門からの排出量については、既に日中の比較が可能なレベルに達している。 推計作業のうち残された部分としては、日本部分の最終需要部門からの家庭系一般廃棄物の推計である。この部分については、環境省の一般廃棄物関連の統計資料と、、松藤ら(松藤2005, 羽原他 2002) の手法を適用することにより、既に推計のノウハウが確立されており、特に大きな障害はないと考えられる。これらの状況を勘案するとおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の目標としては、日中の財・サービスおよび廃棄物から再投入され両国間を移動する資源の推計を行い、日中地域間廃棄物産業連関表(日中WIO表)を完成させることにある。本研究では産業部門から排出される廃棄物を、貿易統計を通じて得られる両国間の移動量や、寺園らの調査(寺園他, 2009)をもとに廃電気電子機器と廃プラスチックの資源循環に注目して推計を行っていきたい。推計された日中WIO表をもとに、日本及び中国の最終需要がそれぞれ両国の経済及び環境にどのような影響を与え、また両国間を移動するリサイクル資源にどのような影響を与えるのか、明らかにし、研究の目的を達成したい。 これらの研究に際しては、研究協力者の林晨(山東大学経済研究院准教授)と密接な連絡を行うことにより進めていきたいと考えている。また必要に応じて、中国との共同研究の経験が豊富な連携研究者(京都大学農学研究科、加賀爪優教授)の協力を仰ぐ。また、可能であれば現地施設の見学を行い、その知見を研究に反映させていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していた2005年版アジア国際産業連関表(IDE0JETROアジア研究所発行)のCD-ROM(価格10万円)が平成26年3月まで発刊されなかったためである。 アジア国際産業連関表は一つ前の2000年版まではCD-ROM販売で価格が10万円であったが、最新版の2005年版からWebでのダウンロードが無料で可能となった。そこで当初の予定を変更し、別の資料の購入予算に使用したい。
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