研究課題/領域番号 |
23510052
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
鷲田 豊明 上智大学, 地球環境学研究科, 教授 (50191739)
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キーワード | 地球温暖化 / 適応策 / 被害関数 / サイクロン被害 / 生物多様性 / 統合評価モデル / 世界貿易 |
研究概要 |
本研究は、地球温暖化に関する適応策を国際貿易を含むグローバルシミュレーションモデルで分析することを目的としている。研究開始から本年度までに、熱帯サイクロンに関して、温暖化ガスの影響が世界貿易に与える影響の分析、および、生物多様性がおなじく世界貿易に与える影響を分析した。 サイクロン被害関数についてはNarita(2009)論文などにもとづき再推計し定式化した。モデルは、世界を16地域に分割し、また、本分析用に産業分類を農林水産業、工業、サービス業に分割し、全球平均気温の1度から4度上昇が世界経済に与える影響を分析した。特に、こうした温度上昇が直接当該地域の経済に与える影響と、世界経済全体からの間接影響の早慶を比較することによって、こうした世界貿易を含むシミュレーションモデルの有用性を示すことができた。この結果については、International Journal of Global Warming誌に掲載されることが決定している。 さらに、本年度は、温暖化による生物多様性の喪失が世界経済に与える影響を、上記と類似したモデルでシミュレーションするために、特に、遺伝子減由来医薬品産業に注目し、同産業の被害を計測することによって明らかにした。その際、元々のモデルから、同産業を分離させることができたことは本研究の大きな成果だった。サイクロンの場合と同様に、産業別の影響を分析することができた。 こうした分析によって、温暖化被害が、世界貿易によってどのように緩和されるのかが示され、これまでの適応策研究が、直接地域や産業に与える影響にのみ焦点を当てていた状況から、世界貿易に影響を十分考慮しなければならないことを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温暖化適応策に関して、最も重要な分野であるサイクロン被害、および生物多様性被害に着いて、それぞれ新たに被害関数を計測し、世界貿易を含む世界経済に与える影響を、世界貿易を含む静学的一般均衡分析によって明らかにすることができた。 それによって、世界貿易を考慮することの重要性を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
既に主な成果は出ているが、次年度に延長する理由はIPCCのワーキンググループIIの被害、適応策に関する報告書をふまえ、これまでの成果に見直しの必要、追加分析の必要を考慮することである。これを次年度に実現し研究成果をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終的な成果は、2014年3月に発表されたIPCC報告書をふまえることになった。その結果、最終的な成果報告書を製本するための委託費及びその作業に関わる人件費分を支出できなかった。 最終的な成果報告書の委託費、および作業のための人件費に支出する。
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