研究課題/領域番号 |
23510055
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
木村 富美子 創価大学, 法学部, 教授 (20225056)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 持続可能性 / 国際公共財 / グローバルコモンズ / ガバナンス |
研究概要 |
本研究の目的は,持続可能な社会の形成に必要な国際公共財(グローバルコモンズ)の維持管理に注目し,その供給に関して国際課税の可能性を検討することである。国境を越えた国際間の問題に関してはガバナンスのあり方の検討が必要である。具体的にはトービン税に端を発する国際連帯税を国際公共財供給の資金として活用するためのシステムを示すことを目的とする。 初年度は本研究の中核となる「公共財」の分析と「国際公共財供給のガバナンス」について重点的に研究した。「市民社会」が注目され,公共財と私的財のギャップを埋める面で企業の社会的責任が求められており,「公共性」をどのように考えるのかという問題意識から「公共哲学」に注目が集まっており,この点からも先行研究をサーベイした。グローバルコモンズの持続可能性における課題について,特にマイナス面に注目して整理し,世界全体の共有資源の有効活用に関して,その課題と今後の展望を示した。コモンズ,公共財などについて概念を整理し,地球全体の共有資源としてのグローバルコモンズの特徴を検討し,グローバルコモンズが持続可能であるためのガバナンスのあり方について,その類型とガバナンスの対応を検討した。 グローバルコモンズを維持・管理するための制度設計には,当事者主権の観点からも多様な主体の参加が望ましい。誰が,どのように参加することが望ましいのか,可能なのかを含めた議論が必要となり,課題の提案・設定,課題ごとの参加者はどのように参加し,参加者間での目標の設定・共有,実行過程の透明化・公開,意思決定における情報共有,合意形成の仕組みなど,当事者主権・合意形成・参加などの制度の枠組みをどうするかが重要な課題となる。様々な属性をもつ多様な意思決定主体を分類・整理し,環境,通貨,情報の3分野に関して,グローバルコモンズの維持・管理の枠組み構築に関する課題を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コモンズ,公共財などについて概念を整理し,地球全体の共有資源としてのグローバルコモンズの特徴を検討した。また,持続可能であるためのガバナンスのあり方について,グローバルコモンズの類型とガバナンスの対応を検討した。これらの成果を学術雑誌に投稿し公開している。 初年度は本研究の中核となる「公共財」の分析と「国際公共財供給のガバナンス」について重点的に研究し,当初の予定通り進展している。また,「市民社会」が注目され,公共財と私的財のギャップを埋める面で企業の社会的責任が求められており,「公共性」をどのように考えるのかという問題意識から「公共哲学」に注目が集まっており,この点からも先行研究をサーベイした。さらに,「新しい公共の担い手」として,社会的企業の事業活動についても分析し,その現状と課題について,計4件の学会発表をした。
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今後の研究の推進方策 |
「公共哲学」の観点からの考察を踏まえて多基準分析,特に参加問題について事例研究を中心に検討し,意思形成-意思決定における参加の観点からの分析枠組みを構築する。 主な国際連帯税から,(1)ピグー税(炭素税),(2)通貨取引開発税,(3)航空券連帯税,などを取りあげ,持続可能な社会構築の観点から,環境経済学,公共経済学の枠組みを用いて課税主体と納税主体とからなる簡単なモデルを構築し,数種類のシナリオにより各税の効果を分析し,前年度までに得られた知見とともに,持続可能な社会構築に向けた国際公共財の供給財源としての国際課税(グローバル・タックス)が有効に機能するために必要な条件を明示する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」76608円のうち76100円は1月に発注したが3月に納品されたため,学内事務手続き上では次年度扱いとなった。また,「公共哲学」関連図書,IT機器,プリンタ用消耗品等「物品費」が当初予算を大幅に越えたが,学会発表時の出張費等が他の予算で確保できたこともあり,「旅費」は当初予算を大幅に下回った。さらに,24年度発表予定学会は東京開催であり,「物品費」と「旅費」の予算枠見直しが必要と考えている。
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