研究課題/領域番号 |
23510055
|
研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
木村 富美子 創価大学, 法学部, 教授 (20225056)
|
キーワード | 持続可能性 / 国際公共財 / グローバルコモンズ / ガバナンス |
研究概要 |
本研究の目的は,持続可能な社会の形成に必要な国際公共財(グローバルコモンズ)の維持管理に注目し,その供給に関して国際課税の可能性を検討することである。国境を越えた国際間の問題に関してはガバナンスのあり方の検討が必要である。具体的にはトービン税に端を発する国際連帯税を国際公共財供給の資金として活用するためのシステムを示すことを目的とする。初年度は本研究の中核となる「公共財」の分析と「国際公共財供給のガバナンス」について重点的に研究し,先行研究をサーベイした。 2年度目となる平成24年度は初年度に分析した公共哲学を踏まえた意思形成-意思決定に関する研究(木村が担当し堀江が協力) および持続可能な社会構築の観点からの分析(木村が担当し萩原が協力する)を行った。前年度実施した「公共財」,「公共哲学」の観点からの考察を踏まえて多基準分析,特に参加問題について事例研究を中心に検討し,意思形成-意思決定における参加の観点からの分析枠組み構築を検討した。 また,持続可能な社会構築の観点から,環境経済学,公共経済学の枠組みを用いて,「社会的企業」について考察した。社会的企業は,社会的課題の解決のみならず雇用の創出,就労支援,経済原則以外も重視する新しい価値観の醸成による社会の変化(自発・自立・互酬)をもたらす主体である。組織の持続可能性の面では,寄付・ボランティアの仲介や資金調達など社会的企業を支援する仕組みが重要であると考え,課題解決に向けた取り組みに必要な支援にはどのようなものがあるのか,また,中間支援組織や支援活動が有効に機能するために必要な条件は何かを明らかにした。さらに,参加型による多様性の反映の構造を,参加場面(段階)の多様性、参加形態の多様性,参加主体の多様性として整理した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のコモンズ,公共財などについて概念整理,地球全体の共有資源としてのグローバルコモンズの特徴の検討,持続可能であるためのガバナンスのあり方についての検討を踏まえて,グローバルコモンズの類型とガバナンスの対応を検討した。「公共哲学」の観点からの考察を踏まえて多基準分析,特に参加問題について事例研究を中心に検討し,意思形成-意思決定における参加の観点からの分析枠組みを構築した。 また,「市民社会」が注目され,公共財と私的財のギャップを埋める面で企業の社会的責任が求められており,「公共性」をどのように考えるのかという問題意識から「公共哲学」に注目が集まっており,この点からも先行研究をサーベイし,「新しい公共の担い手」として,社会的企業の事業活動について分析した。さらに「公共財」の評価に関して,脆弱性の観点からの評価に関し,不確実性下の選択に基づく社会資本整備の構成評価に関しても考察した。以上の研究成果について,3件の学会発表を行うとともに,学術雑誌に3件の論文を投稿し公開している。さらに,現在審査中の投稿論文が3件あり,こちらも審査後には公開の予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度までに得られた知見をもとに,持続可能な社会構築に向けた国際公共財の供給財源としての国際課税(グローバル・タックス)が有効に機能するために必要な条件を明示する。また,持続可能な社会構築に向けた国際公共財の供給財源としての国際課税(グローバル・タックス)を活用するためのシステムを構築し,シナリオ分析の結果を提示する。 「公共哲学」の観点からの考察を踏まえて多基準分析,特に参加問題について事例研究を中心に検討し,意思形成-意思決定における参加の観点からの分析枠組みを構築する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
「物品費」としては,関連図書,IT機器・プリンタ関連の消耗品等を予定している。25年度に発表を予定している学会は徳島県にて開催の予定であるため,4人の出張費(東京から3人,京都から1人)として「旅費」の予算枠を大きくとっている。「人件費・謝金」としては投稿論文のネイティブチェック,「その他」は論文審査料,郵送料などに使用の予定である。
|