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2012 年度 実施状況報告書

中小企業の環境経営を促進する有効な「環境コミュニケーションの場」に関する制度設計

研究課題

研究課題/領域番号 23510057
研究機関京都産業大学

研究代表者

在間 敬子  京都産業大学, 経営学部, 教授 (70349182)

キーワード環境コミュニケーション / 環境経営 / 中小企業 / 制度設計 / エージェントベースモデリング
研究概要

本研究の目的は、「中小企業の環境経営」を促進するための有効な「環境コミュニケーションの場」について、実証分析とエージェントベースモデリング(ABM)によるシミュレーション分析を通して、制度設計を行うことである。平成24年度は、23年度の調査研究を踏まえて以下の研究を実施した。
1.環境経営が普及するプロセスやメカニズムを分析するためのABMを作成した。それは、大企業・中小企業・消費者のBtoBおよびBtoCという2つの市場取引を含むオリジナルなモデルである。基本モデルは、シミュレーション結果から、中小企業にまで環境経営が十分普及していない状況を再現していると言え、その妥当性が確認された。感度分析から、中小企業への普及条件として環境コストが重要であることが示された。環境コミュニケーションの効果を分析するために、応用モデルを作成した。外部の情報的経営資源に対するアクセスの経営者の積極性、外部から中小企業へのアクセスによる情報支援の頻度、および、外部からの情報提供量という3つの要素を導入した。シミュレーション分析の結果、大企業と中小企業が関わる2つの市場で環境経営のイノベーション普及の共進化を表すパターンが得られた。環境政策へのインプリケーションとしては、外部の情報にアクセスする中小企業への支援を行うこと、中小企業へ情報支援を行う外部機関に対する支援を行うことの重要性を指摘することができた。
2.平成23年度に実施した、京都市企業価値創出支援制度における環境ビジネスで認定された中小企業へのインタビュー調査を踏まえて、環境ビジネス・イノベーションを志向する中小企業の特性、環境ビジネス成功の条件、および、情報支援制度の効果について解明した。特に、環境ビジネス・イノベーションを志向する中小企業が「インバウンド型のオープン・イノベーションによる新事業展開」という特性を持つことを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

概ね順調である理由は、以下の3つである。
第1に、中小企業、大企業、消費者という異なるカテゴリーのエージェントによるBtoBおよびBtoCの2つの市場取引を含むエージェントベースモデル(ABM)を作成できたことである。そのモデルは、環境に関するABMの既存研究にはないものであり、オリジナリティが高いことも示された。基本モデルのシミュレーション分析からモデルの妥当性も確認できた。さらに、環境コミュニケーションに関する制度設計のための応用モデルも作成しシミュレーション結果も解析できた。このABM研究に関して、学会報告だけでなく、国際学会誌への投稿を行い、査読を通過し掲載された。
第2に、前年度の後半に実施した中小企業調査を踏まえて、中小企業の環境ビジネス・イノベーションと環境コミュニケーション支援の関連も分析できたことである。オープン・イノベーションという特徴など、計画時の想定を超える新たな知見も得られた。この調査分析研究について、学会発表だけでなく、国内の学会誌に投稿し、査読を通過し掲載が確定した。
第3に、中小企業の経営課題と環境課題に関して網羅的に調査しているデータを見つけ、購入したことである。これまでの調査から、中小企業は多くの課題を抱えていることが明らかになった。そのため、本研究の目的である環境コミュニケーション支援のデザインを検討するにあたり、経営課題と組み合わせた支援の検討が必要であると考えるに至った。研究計画では、アンケート調査の実施を予定していたが、同程度の費用で、より大規模な調査データが存在することがサーベイからわかり、データ購入に切り替えた。今後は、データの詳細な分析を踏まえて、ABMに組み込み制度設計を行う。

今後の研究の推進方策

平成25年度は、次の4つの事項の研究を実施する。
1.中小企業の環境課題と経営課題の関わりについて、平成24年度に入手した調査データから分析する。分析結果を踏まえて、中小企業の環境経営普及のための環境コミュニケーションの場をどのように設計すればよいかを明らかにする。
2.平成24年度に作成したABMの基本モデルおよび応用モデルを、中小企業の環境・経営課題の関係の解析結果も踏まえて精緻化し、シミュレーション分析を行う。モデルの改良の方向としては、中小企業の経営課題と環境課題のファクターをモデル化すること、および、BtoC市場の消費者行動について環境配慮の社会心理学モデルを組み込むことを検討している。
3.3年間の総括として、環境コミュニケーションの場の設計条件について総合的に解析する。その上で、改めて、これまでヒアリングした、自治体、大企業、中小企業支援機関、銀行などへインタビューを行い、本研究で得られた環境コミュニケーションの場の設計に関して、実現に向けた可能性を検討する。
4.総括した結果について環境経営に関する国際学会での報告を行うと同時に、海外の中小企業の環境経営への支援に関して情報を集め、次のステップの研究の方向性を検討する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Conditions to Diffuse Green Management into SMEs and the Role of Knowledge Support: Agent-Based Modeling2013

    • 著者名/発表者名
      Keiko Zaima
    • 雑誌名

      Journal of Advanced Computational Intelligence & Intelligent Informatics (JACIII)

      巻: Vol.17, No.2 ページ: 252-262

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 中小企業の環境ビジネス・イノベーション:成功する企業特性と情報支援の効果2013

    • 著者名/発表者名
      在間敬子
    • 雑誌名

      企業と社会フォーラム年報2013

      巻: 2013 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [学会発表] グリーン・イノベーション普及に関するABM:共進化のメカニズム2012

    • 著者名/発表者名
      在間敬子
    • 学会等名
      計測自動制御学会 システム・情報部門 学術講演会(SSI2012)
    • 発表場所
      名古屋・ウィルあいち(愛知県女性総合センター)
    • 年月日
      20121121-20121123
  • [学会発表] Agent-Based Diffusion Model for Green Management in Small and Medium-Sized Enterprises2012

    • 著者名/発表者名
      Keiko Zaima
    • 学会等名
      International Symposium on Soft Computing, The Asian Science and Technology Pioneering Institutes of Research and Education (ASPIRE) League
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      20121108-20121109
  • [学会発表] 中小企業の環境ビジネス・イノベーション:成功する企業属性と情報支援の効果2012

    • 著者名/発表者名
      在間敬子
    • 学会等名
      企業と社会フォーラム第2回年次大会
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 年月日
      20120920-20120921

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公開日: 2014-07-24  

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