本研究の目的は、中小企業の環境経営を促進するための有効な「環境コミュニケーションの場」について、ヒアリングやアンケート調査による実証分析、および、エージェントベースモデリング(ABM)によるシミュレーション分析を通して、制度設計を行うことである。平成25年度は、24年度と23年度の調査研究を踏まえて以下の研究を実施した。 前年度までの調査で、中小企業は経営課題を抱えており、経営課題にフィットした環境経営支援に対して中小企業が支援の効果を感じていること、つまり、中小企業の環境経営への支援に関する政策をデザインするためには、「中小企業はどのような経営課題に直面しているか」「経営課題において環境経営課題はどのような位置づけか」という基本事項に関する調査の必要性が明らかになった。 これを踏まえて、今年度は、3213社もの従業員100名以下の中小企業に対して網羅的に経営課題の調査を行ったデータ「中小企業 経営課題 実態調査2011」(2011年7月、日経BPコンサルティング)を用いて統計的解析を行い、主に以下の2点が明らかになった。 第1は、中小企業全体では環境面の経営課題に占める重要度は低いことである。第2は、環境経営のクラスタ分析によって、中小企業が経営課題において4つのクラスタに分類されることである。第1は、いずれの項目も課題だと回答していない企業である。第2は、「品質・製造、人材・経費」が課題である企業である。第3は、海外進出等一部の課題を除きほぼ全ての項目が課題であると回答している企業である。第4は、「人材・経費、コンプライアンス・環境」が課題であると回答している企業である。この結果から、これらのクラスタを中小企業の環境経営に関するタイプと関連付けて整理し、タイプ別に環境経営促進策を講じる必要があることが示された。
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