研究課題/領域番号 |
23510063
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
根岸 友恵 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80116491)
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研究分担者 |
伊吹 裕子 静岡県立大学, 付置研究所, 准教授 (30236781)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞毒性 / DNA損傷 / DNA傷害修復 / 酸化傷害 / シグナル伝達 |
研究概要 |
本研究はUVAの生物影響を明らかにすることを目的としている。LEDを利用した高エネルギーの365 nm光を用いて、どのようなDNA傷害が誘導されるか、それがどのような機構で認識されアポトーシスや変異などの細胞毒性につながるのかを調べるために、ショウジョウバエを用い、野生株、DNA傷害修復欠損株、酸化傷害感受性株に対する365 nm-LED光の毒性や変異原性を、310 nm-UVB光およびX線照射の場合と比較した。酸化傷害感受性株は、抗酸化物質である尿酸を欠損した株に、突然変異検出用の遺伝子を含む染色体を導入した株を作成して変異原性試験に用いた。その結果、365 nm-LED光では、310 nm-UVB光と比較してATR欠損株の変異原性が除去修復欠損株より有意に増加し、酸化傷害感受性株においても高い変異原性が観察された。また、除去修復欠損株では見られなかった365 nm-LED光の毒性が、ATR欠損株では明らかに観察され、致死的な傷害も誘起されていることが示された。X線照射の場合も、ATR欠損株および尿酸欠損株で感受性ならびに変異原性の増加が観察された。以前の我々の研究で、X線照射ではDNAの酸化傷害の指標である8-oxodeoxyguanosineの含量の増加が観察されなかったが、365 nm-LED光照射においても増加は見られなかった。これらのことからショウジョウバエにおいては、X線照射と365 nm-LED光照射による傷害が類似しており、DNA酸化傷害ではない突然変異につながる酸化傷害が誘起されている可能性が考えられた。そこでDNA二本鎖切断の指標とされるヒストンH2AXのリン酸化を測定するため方法の確立を図った。ヒトヒストンH2AX の抗体を用いて測定できるとの報告があるので、ヒストンを抽出し、X線照射によるリン酸化が調べたところ、検出可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
365 nm-LED光によって、酸化傷害が体細胞突然変異の要因となっている可能性を支持する結果は得られているが、傷害の要因の一つと考えているDNA二本鎖切断の検出が、予想に反して難航した。DNA二本鎖切断の指標の一つとされているヒストンリン酸化の検出を行っているが、動物培養細胞に適用されている方法がショウジョウバエではそのままで応用できないことがわかったので、ヒストンを抽出して検出を試みたところ、最近X線で誘導されたリン酸化が検出できるようになった。DNA傷害検出法として応用しようとしているコメット分析に着手できていない。 すでに保持しているあるいは新しく作成した株による毒性および突然変異の観察は順調に進んでいるが、ATM欠損株の入手が遅れており、ATRとATM欠損の比較実験が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、種々のショウジョウバエ株を紫外線照射したサンプルについて、方法がほぼ確立できたヒストンH2AXのリン酸化の検出をおこなう。 初年度に取りかかれなかったコメット分析に着手する。そのための機器や器具については準備ができている。 次年度に向けて、ATM欠損株の入手を行い、研究計画書に添った実験を遂行できるようにすることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として消耗品での使用になるが、マイクロプレートリーダーやセミミクロ天秤が老朽化しているのでいずれかを更新する可能性がある。
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