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2012 年度 実施状況報告書

近紫外光(UVA)によるDNA傷害とそのシグナル伝達経路の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23510063
研究機関岡山大学

研究代表者

根岸 友恵  岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80116491)

研究分担者 伊吹 裕子  静岡県立大学, 付置研究所, 准教授 (30236781)
キーワード長波長紫外線 / ヒストンリン酸化 / DNA損傷 / 突然変異 / ショウジョウバエ / 酸化傷害 / DNA傷害修復
研究概要

本研究はUVAの生物影響を明らかにすることを目的としている。365 nm-LED光を用いて、どのようなDNA傷害が誘導され、それはどのような機構で認識されアポトーシスや変異などの細胞毒性につながるのかを調べるために、モデル生物としてショウジョウバエを用い、野生株、DNA傷害修復欠損株、酸化傷害感受性株に対する365 nm-LED光の毒性や変異原性を、310 nm-UVB光およびX線照射の場合と比較した。
24年度はまず、初年度に得られた結果の再現性を確認した。365 nm-LED光では、310 nm-UVB光と比較してATR欠損株の致死感受性、変異原性ともに、除去修復欠損株より有意に増加し、酸化傷害感受性株においても高い変異原性が観察されることが確認できた。これらの結果はX線照射によっても観察されたことからショウジョウバエにおいては、X線照射と365 nm-LED光照射による傷害が類似しており、DNA酸化傷害ではない突然変異につながる酸化傷害が誘起されている可能性が考えられた。そこでDNA二本鎖切断の指標とされるヒストンH2AXのリン酸化の測定を試みた。ヒトヒストンH2AX の抗体を用いて行われる培養細胞の測定方法では、ショウジョウバエ幼虫では検出できなかったが、幼虫からヒストンを抽出して同じ抗体を用いて測定したところ、ヒストンリン酸化が検出可能であった。ヒストンリン酸化は、酸化傷害感受性株において見られ、365 nm-LED照射後30分~1時間の後に起こることが観察された。このリン酸化の増加は野生株では見られず、365 nm-LEDによる酸化傷害が誘因となっている可能性が示唆された。
365 nm-LED光の傷害性における化学物質の存在についても検討した。代表的なナノ粒子である二酸化チタン前処理後の幼虫に365 nm-LED光を照射したが、顕著な変化は見られなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

365 nm-LED光によって、酸化傷害が体細胞突然変異の要因となっている可能性を支持する結果は得られている。傷害の要因の一つと考えているDNA二本鎖切断の一般的な指標とされているヒストンリン酸化の検出を試み、ショウジョウバエ幼虫においてもヒトリン酸化ヒストン抗体を用いて検出が可能となった。
その他のDNA傷害検出法として応用しようとしているコメット分析には着手できていない。
すでに保持しているあるいは新しく作成した株による毒性および突然変異の観察は順調に進んでいるが、ATM欠損株の入手が遅れており、ATRとATM欠損の比較実験が進んでいない。

今後の研究の推進方策

25年度は、24年度に引き続き種々のショウジョウバエ株を紫外線照射したサンプルについて、ヒストンH2AXのリン酸化の検出をおこなう。又、陽性対照として行ったX線照射においてヒストンリン酸化について再現性が得られなかった理由を探るため、365 nm-LED照射においてDNA切断が起きているか、アポトーシス誘導の際に見られるDNA切断など、他の検出方法で確認する。アポトーシスの観察はすでにショウジョウバエで行っており、実施は可能である。
また、DNA傷害の検出のためにコメット分析を試みる。そのための機器や器具については準備ができている。
本年度中でのATM欠損株による実験は困難と考えるが、最終年度に向けて、実験結果のまとめと見直しを行い、研究計画書に添った実験を遂行できるようにすることを目標とする。

次年度の研究費の使用計画

オートクレーブを更新したため、他の備品の購入は計画していない。主として消耗品での使用になる

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Distinct pathways for repairing mutagenic lesions induced by methylating and ethylating agents2013

    • 著者名/発表者名
      Taira, K., Kaneto, S., Nakano, K., Satanabe, S., Takahashi, E., Arimoto S., Okamoto, K., Schaaper, R.M., Negishi, K., Negishi, T.
    • 雑誌名

      Mutagenesis

      巻: 28 ページ: 341-350

    • DOI

      10.1093/mutage/get010. Epub 2013 Feb 27

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chemopreventive effects of the juice of Vitis coignetiae pulliat on two-stage mouse skin carcinogenesis2013

    • 著者名/発表者名
      Arimoto-Kobayashi, S., Zhang, X., Yuhara, Y., Kamiya. T., Negishi, T.
    • 雑誌名

      Nutrition and Cancer

      巻: 65 ページ: 440-450

    • DOI

      10.1080/01635581.2013.767916

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel Antimutagenic Proteins in The Edible Mushroom Agrocybe cylindracea2012

    • 著者名/発表者名
      Yoneda, K., Shiozawa A., Kitahara, A., Takahashi, E., Arimoto, S., Okamoto K., Negishi, T.
    • 雑誌名

      Genes & Environment

      巻: 34 ページ: 9-17

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Effect of aflatoxin B1 on UDP-glucuronosyltransferase mRNA expression in HepG2 cells2012

    • 著者名/発表者名
      Hanioka N., Nonaka, Y., Saito K., Negishi, T., Okamoto, K., Kataoka, H., Narimatsu, S.
    • 雑誌名

      Chemosphere

      巻: 89 ページ: 526-529

    • DOI

      10.1016/j.chemosphere.2012.05.039.

    • 査読あり
  • [学会発表] 尿酸欠損が体細胞突然変異に及ぼす影響2013

    • 著者名/発表者名
      小池亮太、有元佐賀惠、岡本敬の介、根岸友惠
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130328-20130330
  • [学会発表] LED-UVAの遺伝毒性2012

    • 著者名/発表者名
      根岸友惠、樊 星、井出直宏、東 正一、豊岡達士、伊吹裕子
    • 学会等名
      第41回日本環境変異原学会
    • 発表場所
      静岡
    • 年月日
      20121129-20121130
  • [学会発表] バイオフォトン測定による酸化・抗酸化活性の新たな測定方法の検討2012

    • 著者名/発表者名
      橋本和政、勝又政和、有元佐賀惠、岡本敬の介、根岸友惠
    • 学会等名
      第41回日本環境変異原学会
    • 発表場所
      静岡
    • 年月日
      20121129-20121130
  • [学会発表] Somatic cell mutation induced by environmental cigarette smoke in Drosophila2012

    • 著者名/発表者名
      Tomoyo Uchiyama, Ryota Koike, Yoko Yuma, Keinosuke Okamoto, Sakae Arimoto, Tomoe Negishi
    • 学会等名
      3rd Asian Conference on Environmental Mutagens
    • 発表場所
      タイ(パタヤ)
    • 年月日
      20121123-20121126
  • [学会発表] Phototoxicity of titanium dioxide nano-particles on Drosophila melanogaster2012

    • 著者名/発表者名
      Xing Fang, Keinosuke Okamoto, Sakae Arimoto, Tomoe Negishi
    • 学会等名
      3rd Asian Conference on Environmental Mutagens
    • 発表場所
      タイ(パタヤ)
    • 年月日
      20121123-20121126
  • [学会発表] 尿酸欠損が体細胞突然変異に及ぼす影響2012

    • 著者名/発表者名
      小池亮太、有元佐賀惠、岡本敬の介、根岸友惠
    • 学会等名
      第51回日本薬学会中国四国支部大会
    • 発表場所
      松江
    • 年月日
      20121110-20121111
  • [学会発表] ナノ粒子の光毒性2012

    • 著者名/発表者名
      樊 星、有元佐賀惠、根岸友惠、岡本敬の介、伊吹裕子、豊岡達士
    • 学会等名
      第51回日本薬学会中国四国支部大会
    • 発表場所
      松江
    • 年月日
      20121110-20121111
  • [学会発表] LED-UVAの遺伝毒性2012

    • 著者名/発表者名
      根岸友惠、樊 星、井出直宏、東 正一、豊岡達士、伊吹裕子
    • 学会等名
      第34回日本光医学光生物会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20120727-20120728

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公開日: 2014-07-24  

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