研究課題
本研究の目的は、人体内残留放射能の病理学的研究を行うことである。長崎大学原爆後障害医療研究所にて、長崎原爆被爆者病理標本の残留放射能を検出し、放射線が人体に及ぼす内部被曝の影響を分子病理学的に解明する。原爆被爆者における放射線障害は外部被曝線量によって厳密に評価されている。しかしながら、外部被曝のみの範疇で入市被爆者における染色体異常(鎌田他、2006)などの報告を説明することは不可能であり、内部被曝の人体に及ぼす重要性が示唆される。原爆投下後70年余たった今、高齢化する被爆者救済の社会的世論を踏まえ、この領域の人体病理学的研究を急務と考え、原爆被爆者について新たな突破口としての研究を行い科学的証拠を提唱したい。長崎の原子爆弾はプルトニウム爆弾である。核分裂によって核分裂生成物とならなかった量的に少ない燃え残りのプルトニウムが放射性降下物(フォールアウト)として、大気圏あるいは地上を汚染した。半減期は約2万年で壊変時には生物学的に危険なアルファ粒子が放射される。米国変換資料の中から、長崎原爆被爆者として被爆距離1km以内の急性被爆症例7症例、内部被曝例としてトロトラスト症例1症例、対照として国立長崎医療センター病理解剖例4症例、九州大学病理解剖例3症例を用いて、骨、骨髄、肺、肝臓、腎臓などの病理標本についてオートグラフ法を行った。得られたアルファ粒子飛跡の長さを計測し、被爆者標本について、1.Zeiglarの方法により239Pu放射線核種の同定をした。2.ヒトゲノム不安定性のマーカーであるがん関連たんぱく53BP1に着目した免疫組織化学では、高発現が認められた。3.放射線検出器による放射線核種の同定については現在進行中である。以上より、長崎原爆被爆者について放射性物質が人体内に存在したという内部被曝の科学的証拠が被曝後70年余たった現在になって初めて提示された。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 14件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)
Thyroid
巻: 24 ページ: 593-598
10.1089/thy.2013.0214.
巻: 24(3) ページ: 502 -510
10.1089/thy.2013.0038.
Human Reproduction
巻: 29(3) ページ: 462-472
10.1093/humrep/det438.
巻: 28(1) ページ: 109-118
10.1093/humrep/des364.
Diagnostic Molecular Pathology
巻: 22 ページ: 174-180
10.1097/PDM.0b013e31828191de.
Wound Repair and Regeneration
巻: 21(1) ページ: 141-154
10.1111/j.1524-475X.2012.00864.x.
Journal of Obstetrics and Gynaecology Research
巻: 39(8) ページ: 1281-1292
10.1111/jog.12117.
巻: 28(10) ページ: 2794-2803
10.1093/humrep/det280.
Journal of Medical Microbiology
巻: 62(11) ページ: 1755-1759
10.1099/jmm.0.062067-0.
Anticancer Research
巻: 33(9) ページ: 4049-4059
巻: 23(7) ページ: 817-828
10.1089/thy.2012.0466.
Journal of Surgical Research
巻: 186(1) ページ: 446-451
10.1016/j.jss.2013.09.007.
Histopathology
巻: 63(5) ページ: 726-734
10.1111/his.12233.
International Journal of Cancer
巻: 134(4) ページ: 905-912
10.1002/ijc.28408.
http://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/pathology/index.html