1. 非保護テロメア端の末端結合修復と53BP1、Rad18の関係 (1)実験系の構築について、染色体末端結合修復について、その結合の方式を定量的に評価する系を構築した。具体的には染色体末端保護タンパクTRF2のsiRNAを用いて染色体末端を露出した状態を誘導し、その末端の結合修復活性をTelomeric PNA FISHを用いて定量的に測定する系を構築した。(2)53BP1-/-MEF、Rad18-/-MEF、野性株MEFを用いた非保護テロメア端の結合能について、Rad18-/-MEFは野性株MEFと同等の結合能を示した。53BP1-/-MEFの結合能は著しく低下することを示した。 2. 非保護テロメア端の末端結合修復と細胞周期依存性 (1)Chromosome Orientation (CO)-FISHによる末端結合の細胞周期依存性 CO-FISHを用いて、末端結合の細胞周期依存性を検討した。その結果、Rad18-/-MEF、野性株MEFにおいて、末端結合の約80%はcromosome type、約20%はchromatide typeの結合であった。1の結果と合せてRad18による末端結合の関与は認められないと考えられる。(2)53BP1-/-MEFにおいて、CO-FISHの結果から、Rad18-/-MEF、野性株MEF と比較して、T-SCE(テロメア末端姉妹染色体分体組換)が高頻度に起こることがわかった。このことは、極めて相同性の高い部位における組換修復の機構を検討する上で重要な知見を与えてくれるものと考えられる。(3) 53BP1-/-MEFにおいて、CO-FISHの結果を詳細に検討すると、lagging strandとleading strand、lagging strand同士、leading strand同士のT-SCEに大差は認められなかった。このことから、T-SCEは細胞周期依存性はないと考えられる。
|