研究概要 |
1)赤外線A,B波曝露による眼内熱輸送解析 赤外線曝露中の眼内での熱輸送を可視化したところ、赤外線A波は色素のある組織(虹彩、網膜等)に吸収されて発熱し、虹彩直下の水晶体に熱変性を及ぼすこと、赤外線B波は角膜に吸収されて発熱し、その熱が房水の対流により虹彩、水晶体に輸送されることが示された。この結果より、赤外白内障の発症機序は波長1400 nmを境に異なることが明らかとなった。また、炉前作業において、ガラス融解炉および鉄融解炉作業での赤外線A波の含有率はそれぞれ、15.2%, 7.6%と少なく、炉前作業での眼の安全は赤外線B波を中心に考慮すべきことが示唆された。 2)3次元眼球モデルによる赤外~ミリ波曝露による眼内の熱輸送動態 家兎眼球のMRI画像を元に、細隙灯顕微鏡下による前眼部の詳細な観察データを加味して家兎眼球モデルを作成した。一方で、実験1)の結果に示すように赤外線A波(808 nm)、赤外線B波(1,550 nm)、赤外線C波(CO2レーザー:10,600 nm)曝露中の眼内の熱輸送動態が解明されたので、眼内の赤外部での熱輸送動態は計算可能となった。しかし、本研究の範囲外である超遠赤外領域(波長:25-1000μm、テラヘルツ波、ミリ波領域では眼部照射のデータは100 GHz程度までしかなく、赤外領域とミリ波領域での安全性の防護指針の一貫性を求めるには、今後の研究データを待つ必要がある。
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