研究課題/領域番号 |
23510071
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研究機関 | 公益財団法人放射線影響研究所 |
研究代表者 |
平井 裕子 公益財団法人放射線影響研究所, 遺伝学部, 研究員 (90136052)
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研究分担者 |
児玉 喜明 公益財団法人放射線影響研究所, 遺伝学部, 部長 (60359453)
中村 典 公益財団法人放射線影響研究所, 遺伝学部, 顧問 (00010116)
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キーワード | XPA / 保因者 / 創始者変異 / 皮膚がん |
研究概要 |
日本人に高い頻度で存在が報告されている色素性乾皮症A群(XPA)遺伝子の創始者変異の保因者の皮膚がんのリスクを明らかにするために、XPA遺伝子の創始者変異を簡単なPCR-RFLP法で検出して、皮膚がん(メラノーマを除く)患者と一般集団における創始者変異の保因者の頻度を比較し、保因者の発がんリスクを評価することを目的としている。パラフィン包埋された皮膚がん1000 症例(メラノーマは除外する)と対照群として、1970 年代に行われた子どもの染色体調査に用いられたギムザ染色されたリンパ球の塗抹標本700症例を使用することとした。この標本は研究代表者が所属する放射線影響研究所において保存され、使用が可能である。 本年度は引き続き200症例の皮膚がんのDNAを準備した(総数900症例)。 スクリーニングを以下の方法で開始した。創始者変異を含むDNA領域をPCR法により増幅させ(増幅断片61bp)、増幅DNA断片の一部を制限酵素AlwN1あるいはHindIIIで処理し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により分離する。創始者変異がある場合には、増幅DNA 断片(61bp)がAlwN1処理により25bp と36bp の二つの断片に分断される。PCR法で増幅されたDNAが正しくXPA遺伝子に由来することを確認するために、増幅DNA断片をHindIIIで処理する。この場合、XPA遺伝子由来であれば創始者変異の有無とは関わりなく、38bp と23bp の長さの断片に分断される。 対照群700症例はすべてスクリーニングを行ったが、PCR法により増幅できた症例は682例で、その中で4例が保因者であった。皮膚がんは350症例スクリーニングを行い、3例が保因者であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮膚がんは1000症例の解析を予定しているが、昨年度、700症例の皮膚がんのDNAの抽出しか行えなかった。本年度は、200症例の皮膚がんのDNA抽出を行った。保因者のスクリーニングは、リンパ球の塗抹標本に関しては、700症例全例を終了した。皮膚がんに関しては、350症例について終了した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度準備できなかった皮膚がん100症例の収集およびDNAの抽出を行う。 皮膚がん650症例のスクリーニングを行い、保因者における皮膚がんリスクを明らかにするために、統計解析を行う。 統計解析の結果、保因者では皮膚がんのリスクが上昇していると示唆された場合には、保因者のがんが、XPA遺伝子の失活によるのか、それとも正常対立遺伝子を残してヘテロのままで、別の遺伝子に変化を生じたのかを調べるために、ヘテロ接合性の消失(loss of heterozygosity; LOH)や塩基配列を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入品の定価に変更があったため、次年度に使用する予定の研究費が生じた。当該研究費は、次年度研究費と合わせて、皮膚がん650症例のスクリーニングを行うためのPCR法に必要な試薬、消耗品および塩基配列解析試薬の購入に使用する。
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