研究課題/領域番号 |
23510073
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
渡辺 元 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90158626)
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研究分担者 |
田谷 一善 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60092491)
永岡 謙太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60376564)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環境 / 生殖毒性 / ニトロフェノール / ディーゼル排気ガス |
研究概要 |
本年度はディーゼル排気ガス微粒子(DEP)から単離されたニトロフェノール類の中で、エストジェン活性がin vitro 及びin vivoで明らかにされている 4-nitro-3-phenylphenol (PNMPP)について、春機発動前の幼若雄ラットを用いて下垂体細胞および性腺細胞に対する直接作用とin vivoにおける抗雄性ホルモン作用について解析した。 春機発動前の幼若雄ラットの下垂体性腺刺激ホルモン分泌細胞及び精巣ライディッヒ細胞に対するPNMPPの直接作用を調べるために、28日齢の雄ラットから下垂体および精巣を摘出し培養した。その結果、培地へのPNMPP添加は下垂体細胞からのFSHおよびLHの基礎分泌に対し無効であったが、GnRHによる分泌刺激に対する反応は、PNMPP添加によって有意に低下した。一方、精巣のライディッヒ細胞はPNMPP添加によりテストステロン分泌が有意に増加し、hCGの刺激に対しても増強作用が見られた。 次に精巣を摘出した春機発動前の28日齢の幼若雄ラットにテストステロンを含んだシリコンチューブを移植し、常に一定レベルのテストステロンが維持されるようにした。このように処置した動物を4群に分け、PNMPP (0.001あるいは0.01 mg/kg)投与群、あるいはアンドロジェンレセプター拮抗薬であるフルタマイド (4 mg/kg)投与群、溶媒であるごま油を投与した対照群を設けて、それぞれ7日間皮下投与した。その結果、PNMPP 0.001mg/kg投与群で腎、前立腺、亀頭の重量が対照群に比べて有意に減少していた。PNMPP 0.001および0.01mg/kg投与群で血液中FSHおよびPRL濃度が有意に上昇した。これらの効果はアンドロジェンレセプター拮抗薬であるフルタマイドの結果と同様であり、PNMPPが抗雄性ホルモン作用を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ニトロフェノール類の副腎機能や性腺への作用を明らかにする一連の実験及びエストロゲン反応性乳癌に関する研究を通じて、以下の4点を明らかにする事を目標とした。1)次世代影響、特に脳の性分化に関する影響を明らかにする。2)下垂体、卵巣、精巣、副腎の細胞レベルでの作用メカニズムを解明する。3)株化乳癌細胞(in vitro)を用いて、ニトロフェノール類の乳癌細胞増殖活性化作用を明らかにする。4)株化乳癌細胞系を用いるニトロフェノール類の新しい影響評価法を開発する。本年度は、2)の下垂体および精巣に対する影響を明らかにすることができた。1)、3)については今後実施の予定である。方法は既に確立している。24年度に実施する予定であった初代細胞培養系を用いるニトロフェノール類の作用メカニズムの解明 1.下垂体前葉細胞系:雌雄ラット下垂体前葉細胞を単層培養し、LH、 FSH、プロラクチン、3.精巣細胞系:ラット精巣中のLeydig細胞とSertoli細胞を単層培養し、テストステロンとインヒビン分泌に及ぼす影響は、23年度に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
各種生理的状態下のラットにおけるニトロフェノール類の副腎系・生殖系への影響1.日齢の異なる雌雄ラットにおける投与実験春機発動期(5週間)、成熟(3ヶ月)、老齢(12ヶ月以上)の雌雄ラットに、ニトロフェノール類3容量を14日間皮下注射し、血中各種ホルモン(コルチコステロン、プロジェステロン、テストステロン、エストラジオール、インヒビン、プロラクチン、甲状腺ホルモン、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン(GH)を測定する。2.雌ラットの妊娠期および泌乳期における投与実験(1) 妊娠期の実験:妊娠全期間(21日間)を通してニトロフェノール類を皮下注射し、妊娠の維持と胎子の外部形態に及ぼす影響を調べると共に妊娠ラットの妊娠5日、10日、15日、20日に血中各種ホルモン濃度を測定する。(2) 泌乳期の実験:分娩日(泌乳0日)から離乳日まで20日間母ラットにニトロフェノール類を皮下注射して、泌乳5日、15日、20日に血中各種ホルモン濃度を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、実験動物、飼育飼料、ホルモン測定に使用する。
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