研究課題/領域番号 |
23510074
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高本 雅哉 信州大学, 医学系研究科, 講師 (90226928)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 内分泌かく乱化学物質 / ヘルパーT細胞 / 大豆 / ビスフェノールA |
研究概要 |
これまで研究代表者らは内分泌かく乱化学物質がヘルパーT細胞分化に影響を与えることを、ビスフェノールA(BPA)を用いて明らかにしてきた。そのなかでBPAはTh2分化を亢進させること、および出生前BPA暴露は成長後の暴露に比しはるかに低用量で作用を示すことを示した。マウス飼料中に含まれる大豆は内分泌かく乱化学物質である植物エストロゲンであるダイゼインやゲニステインを含んでいることから、飼料中のそれらの物質がBPAと同様T細胞分化に影響を及ぼしている可能性がある。23年度は大豆由来物質を含まない飼料をもちいて繁殖させたマウスを作成し、飼料中の植物エストロゲンがヘルパーT細胞分化に影響を及ぼすかどうかを検討した。実験には、できるだけ母マウス由来の植物エストロゲンの影響を少なくするため、繁殖前に大豆除去飼料のみを3週間与えたマウスより2度目以降の出産で生まれたマウスを次の繁殖に用いた。その後は大豆除去飼料のみで継代維持を行なった。飲水はガラスの給水瓶から蒸留水を与え、TPX製のケージとステンレス網のふた、紙チップをもちいて飼育した。普通飼料(N)および大豆除去飼料(SF)を用いて数世代繁殖させたC57BL6雄マウスをKLHで免疫した。BPA投与群は免疫前に経口的にBPAを投与した。14日後に再度免疫しその7日後に脾臓を採取した。脾臓中にTh1/Th2/Th17/Tregが誘導されたかどうかを、サイトカイン産生などを指標に検討した。SF群はN群と比較してTh1の割合およびIFN-γ産生が亢進していた。両群とも免疫前にBPAを投与することによりTh1およびIFN-γ産生の亢進は低下した。以上の結果よりマウス飼料中の大豆由来物質はTh1細胞分化を抑制させること、および同様の作用を持つ内分泌かく乱化学物質であるBPAと相加的な効果を持つことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの物質の影響を網羅的に調べる予定にしていたが、飼料中の植物エストロゲンの影響があることが判明した。その結果はが学会等で発表済みである。また詳細な結果が判明後に網羅的な検討を行うこととしたため一部研究の順序を入れ替えることにしたが、問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
新たに出てきた研究上の問題点として、これまで出生前BPA暴露は成長後の暴露に比しはるかに低用量で作用を示すことを示しているが、飼料中の植物エストロゲンの影響を考慮に入れる必要がある。そこで、大豆除去飼料を用いて繁殖中のマウスにBPAを与えて生まれてくるマウスに、普通飼料を用いて繁殖させた場合と同様の影響が見られるかどうか、その影響の大きさなどを比較検討することを24年度計画に新たに加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、大豆除去飼料を用いて繁殖させたマウスにおける、抗原提示細胞である樹状細胞・マクロファージ、好塩基球、ナチュラルヘルパー細胞などの機能の検討をおこなう。また、23年度に多くの物質の影響を網羅的に調べる予定にしていたが、飼料中の植物エストロゲンの影響があることが判明したためにその結果が判明後に網羅的に検討することとした。したがって24年度への繰越金が発生したが、24年度以降のマウス使用予定数の増加によるものである。この研究も24年度より始める。
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