これまでの研究で、マウス飼料中の大豆に含まれる物質、おそらくは内分泌かく乱化学物質である植物エストロゲンであるダイゼインやゲニステインがビスフェノールAと同様T細胞分化に影響を及ぼしTh1細胞分化を抑制させること、および大豆由来物質はM2分化を誘導していると示唆される実験結果を得た。25年度はさらに大豆由来物質による変化を詳細に検討し、マクロファージにおける変化がT細胞分化に及ぼされた影響と関連しているのかどうかについて検討した。 普通飼料(N)および大豆除去飼料(SF)を用いて数世代繁殖させたC57BL6およびBALB/c雄マウスの腹腔および脾臓よりマクロファージを採取した。マクロファージ表面のM1・M2マクロファージ特異的な受容体の発現をフローサイトメーターで解析した。SF群はN群と比較してCD204,CD206などM2マクロファージマーカーの発現が低下する傾向はみられたが個体差があった。TLR4の発現にはほとんど変化がなく、M2分化が抑制されやすいSTAT6KOマウスと似たパターンを示した。LPS刺激によるサイトカイン、ケモカインの産生を比較したがSF群とN群で特に有意な差は認められなかった。SFおよびN群のマウスから腹腔マクロファージおよび脾臓接着性細胞を分離しN群およびSF 群のマウスに移入した。それぞれのマウスをKLHで免疫し、14日後に再度免疫しその7日後に脾臓を採取した。脾臓中にTh1/Th2/Th17/Tregが誘導されたかどうかを、サイトカイン産生などを指標に検討した。23年度に明らかにしたようにSF群はN群と比較してTh1の割合およびIFN-γ産生が亢進していたが、腹腔マクロファージおよび脾細胞のSF→N移入群、N→SF移入群において、細胞移入していない群との差は見いだせなかった。これらの結果より、マウス飼料中の大豆由来物質によるTh1分化抑制活性はマクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞を介しているのではないことが示唆された。
|