研究概要 |
ニトロソ化アミノ酸・ニトロソアミン類のUVA光活性化による生物影響の解析を目標に,皮膚モデルとして、ヒト由来表皮ケラチノサイトNCTC2544細胞およびHaCaT細胞に対する、ニトロソプロリン(NPRO)のUVA光反応を解析した。その結果、照射量及びNPRO用量依存的にDNA損傷を起こし小核形成を誘起した。同時に、細胞培養液に用量依存的にNOが検出された。また、NPROのUVA光活性化による損傷部位の構造を解析するため、まず、デオキシヌクレオチドに対するニトロソプロリン(NPRO)のUVA光反応を解析した。その結果、dGとNPROの光反応で8-オキソデオキシグアノシン(8-oxodG),デオキシキサンチン,デオキシオキザノシンに加えて新たな反応物を単離同定し、(R)-,(S)-8- (2-pyrrolidyl)-dG (G1, G2)と構造決定した。また、dAとNPROの好気下での光反応生成物を解析し、デオキシイノシンとdAの2位置換体(R)-,(S)-2-(2pyrrolidyl)-dA (P1, P2)を単離同定した。一方、dAとNPROの嫌気下での光反応では、8位置換体(R)-,(S)-8- (2-pyrrolidyl)-dA (A1, A2)が形成した。好気下ではdGやdAの8位は酸素ラジカルの付加による8-oxodGの方が優先する可能性が考えられ、エネルギー移動によるタイプI型反応と、活性酸素種の関与するタイプII型反応の競合の可能性が考えられる。さらに、光活性化NPRO はDNAと反応し、上記の付加体(G1, G2, P1, P2, A1, A2)を生じることが分かった。また、320-400 nmの単波長照射による光動力学解析により、小核形成・NO産生ともにNPROの吸光度曲線に沿うことから、NPROのUVA吸収によるNN結合の開裂が光反応律速と考えられる。
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