研究課題
ビスフェノールS(BPS)等の新世代ビスフェノール類は、高機能プラスチック原料や感熱紙の顕色剤として国内外で使用されている。しかし、これらは低濃度暴露による内分泌かく乱作用が懸念されているビスフェノールA (BPA)の代替物であるものの、安全性や環境リスクに関する十分な知見が得られているとは言い難い。そこで本研究ではBPSとBPS-monoP、BPAの環境排出源と考えられるプラスチック原料製造工場、感熱紙製造工場、製紙工場、下水処理施設の各周辺で採取した水質・底質・生物試料を分析し、各媒体からの環境負荷量の解析と水生生物へのリスク評価を試みた。分析の結果、環境中の水質・底質・生物試料からBPS, BPAなどが検出された。濃度値は、BPSが製紙工場周辺で、BPAがプラスチック原料製造工場周辺の試料でそれぞれ高値を示し、排出源からの影響が示された。また、BPSとBPS-monoPが野生生物から初めて検出された。今回得られたビスフェノール類の濃度値から、排出源別の水域負荷量を推算したところ、製紙工場からの寄与が最も大きく全体の88~98%を占めることが示された。また、BPSの水域負荷量はBPAの5~20倍であり、これらの物質が水環境中へ多量に排出されている様子が窺えた。さらに、MEC/PNEC比(実測濃度と予測無影響濃度の比)を用いBPSとBPAの生態リスク評価を行った。その結果、BPSのMEC/PNEC比が1を超えた地点は1カ所、0.1~1の間の地点は5カ所存在した。本物質の水生生物への影響が懸念され、今後を詳細に調査する必要があると思われる。
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