研究課題/領域番号 |
23510081
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 研究教授 (10115280)
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研究分担者 |
岩本 顕聡 奈良県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (20448773)
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キーワード | 有害化学物質 / エストロゲン補充療法 / 乳がん / 4-OHEN-DNA付加体 / ヌクレオチド除去修復 |
研究概要 |
更年期障害女性に対するエストロゲン補充療法の代表薬プレマリンの長期服用で、乳がんなどの発がん頻度が上昇する。プレマリンは妊娠馬の尿から製造されるため、天然エストロゲン以外にB環不飽和型エストロゲン(エクインエストロゲン)を含む。エクインエストロゲンは生体内で代謝活性化され高突然変異性の4-OHEN-DNA付加体を形成するが、検出系が未整備なため発がんとの関わりが研究できなかった。そこで、我々は4-OHEN-DNA付加体特異モノクローナル抗体を新規開発し、10<8>塩基中5個の同付加体を定量できる実験系(ELISA)を確立した。 本研究では、ヒト乳がん細胞 (MCF-7) において、活性型エクインエストロゲンである4-OHENおよび4-OHEQを処理した後、4-OHEN-DNA 付加体の修復動態を検討した。その結果、いずれの場合も、24時間以内に有意な修復が起こらないことを発見した。同じヌクレオチド除去修復機構(NER)で修復される紫外線誘発シクロブタン型二量体や(6-4)型光産物、および活性型アセチルアミノフルオレン(AAF) 誘発AAF-DNA付加体の修復動態について同細胞で検討した結果、3種類の損傷とも有意な修復が観察された。さらに、4-OHEN-DNA付加体の難修復性を確認するため、NER欠損患者(XP-A)と健常人の細胞を用いて、4-OHEN、紫外線およびAAFに対する感受性をMTS法で検討した。その結果、正常細胞はXP-A細胞に比べて紫外線およびAAFに対して抵抗性を示すが、4-OHENに対しては両細胞で同程度の感受性となることから、難修復性が4-OHEN-DNA付加体に特有の現象であることが確認された。 難修復性の機序の解明のため、ヒストンが4-OHEN付加体DNAと結合することが修復蛋白の付加体接近を妨害するとの仮説の下、様々な方法で検証実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
難修復性の機序の解明に手こずっている。ヒストンが4-OHEN付加体DNAと結合することが修復蛋白の付加体接近を妨害するとの仮説の下、ゲルシフト法を用いて実験しているが、まだ実験系が確立できていない。
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今後の研究の推進方策 |
難修復性の機序として、ヒストンが4-OHEN付加体DNAと結合することが修復蛋白の付加体接近を妨害するとの仮説を検証するため、新たに競合ELISA法を検討する。つまり、4-OHEN付加体DNAをELISAプレートにコートし、4-OHEN-DNA付加体とモノクローナル抗体との結合に対するヒストンの競合阻害作用を検討する。同様な実験を、紫外線DNA損傷やAAF-DNA付加体についても行い、ヒストンがとりわけ強く4-OHEN付加体DNAに結合することを示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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