研究課題/領域番号 |
23510082
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
鈴木 俊英 帝京大学, 薬学部, 准教授 (60256055)
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キーワード | ヒ素化合物 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / 細胞毒性 |
研究概要 |
本研究の主目的である「ヒ素化合物による、ヒストン修飾の多様性」についてこれまで同様ヒストンH3の修飾部位および修飾形について検討を進めるとともに、免疫蛍光染色法により細胞内での修飾ヒストンH3の局在性についての検討も行った。iAs(III)により顕著に修飾が亢進されるヒストンH3(Ser10)のリン酸化(H3S10p)、ヒストンH3(Lys9)のジメチル化(H3K9me2)、ヒストンH3(Thr10)のリン酸化(H3T11p)、ヒストンH3(Lys9)トリメチル(Ser10)リン酸化(H3K9me3S10p)の細胞内局在性を検討したところ、iAs(III)処理によりH3S10p、H3T11p、H3K9me3S10pはドット状のシグナルが観察され、クロマチンの特定の部位が修飾されていることを確認した。一方、H3K9me2はiAs(III)処理によってクロマチン全体でシグナルが増強した。iAs(III)により誘導されるH3S10pの細胞内局在と他の修飾の局在性を調べたところ、H3K9me3S10pは一部局在が一致していたが、H3T11pおよびH3K9me2は局在性が異なっていた。 また、クロマチン免疫沈降法を用い、これらの修飾されたヒストン近傍にiAs(III)によって誘導される遺伝子が局在しているかについて検討を行ったところ、FOSおよびEGR1の遺伝子が巻き付いているヒストンは、iAs(III)によりH3S10pおよびH3K9me3S10pが増加していることが確認された。 これらの結果を考えあわせると、iAs(III)はクロマチンの特定領域のヒストンH3を修飾し、その修飾される特定領域にはFOS、EGR1プロモーター領域も含まれ、これらの遺伝子の発現を誘導している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主目的である「ヒ素化合物による、ヒストン修飾の多様性を明らかにする」についてはおおむね順調に進行しており、昨年度行う予定であった修飾ヒストンの細胞内局在性についての結果が得られつつある。しかし、本年度行う予定であった、iAs(III)によるヒストン修飾に関与している酵素の検討については、予備的な検討しか行えなかった。だが、これまで遅れていたクロマチン免疫沈降法の研究は順調に進んでおり、おおむね順調ではあるが、全体的に見るとやや遅れているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
iAs(III)により修飾された、H3S10pとH3K9me3S10pは細胞内での局在が一部一致していたが、これは同じヌクレオソームであるのか否かについて検討を行いたい。また、iAs(III)により修飾が見られた、H3S10p、H3K9me2、H3T11p、H3K9me3S10pに関与している酵素の検討を行い、iAs(III)によるヒストン修飾メカニズムの詳細を明らかにしたい。 さらに、クロマチン免疫沈降法による検討を進め、iAs(III)によるヒストンH3の修飾が、FOS、EGR1のプロモーターのどの領域が巻き付いているヒストンH3で起こるのか、そしてこの領域に結合する転写因子が、iAs(III)による遺伝子発現に関与しているのか否かについて検討を行いたい。
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