研究実績の概要 |
C57BL/6系マウス及びDBA/2系マウスに、TCDDタイプであるがAhレセプター非依存的であることが報告されているpolychlorinated biphenyl(PCB)、3,3',4,4'-tetrachlorobiphenyl(CB77)及びTCDD様作用とフェノバルビタール様作用を併せ持つ混合タイプのPCB、2,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl(CB118)を投与し、解析の結果、CB77及びCB118による血清中T4濃度の低下は、主として肝臓へのT4の蓄積によって起こり、胆汁中へのT4のグルクロン酸抱合体の排泄や肝肥大も一部関与していることが示された。また、T4の輸送タンパクであるトランスサイレチン(TTR)をノックアウトしたマウスに、2,2',4,5,5'-pentachlorobiphenyl(PentaCB)を投与することにより、野生型マウスにおいて、PentaCBによる血清中T4濃度の低下は、T4の血中から肝臓へ蓄積によって起こることが示された。また、PentaCBによるT4とTTRとの結合阻害は、血清中サイロキシン(T4)濃度の低下を促進することが示された。さらに、Wistar系ラット及びUGT1ファミリーを欠損したGunn ラットにKanechlor-500(KC500)を投与した実験結果及びKC500投与後4日に、[125I]T4を静脈内投与した実験結果から、KC500を投与したWistar系ラットでは、T4のグルクロン酸抱合体の胆汁中排泄は起こるが、それを大きく上回る肝臓へのT4の移行量の増加が血清中T4濃度の低下の主要な要因となることが示唆された。 以上、PCBによる血中T4濃度の低下は、主として肝臓へのT4の蓄積量の増加に起因していることを明らかにした。
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