研究課題/領域番号 |
23510086
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
チャン ヨンチョル 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30422025)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | テトラクロロエチレン / Propionibacterium / PCEデハロゲナーゼ / 微生物群集構造解析 |
研究概要 |
H23年(初年度)においては分解活性制御因子の検討及び分解機構の解明を行い、さらに分解酵素の部分精製を行った。Propionibacterium sp. HK-1株はテトラクロロエチレン(PCE)分解においてトリクロロエチレン(TCE )などの中間代謝産物を蓄積せずに、PCE (0.3 mM) を速やかに分解した。様々な電子供与体の供与によって分解率の向上が確認された。反応液中の塩化物イオン(0.094 mM)濃度がPCE(0.026 mM)の分解によって生じる化学量論値の91%と一致したことから、ほとんどのPCEは脱塩素化されたと考えられる。 一方、 [1,2-14C]でラベルしたPCEを用いた実験では全放射能活性の17%のみが回復されたが、7%のエチレンが検出されたため、Propionibacterium sp. HK-1株はPCEを部分的にエチレンにまで転換したことが分った。 一方、分解酵素であるPCEデハロゲナーゼを精製するため、DEAE-Toyopear1650、Superdexpg-75、PorosHQの順で精製を行ったが、完全な精製にまでは至らなかった。PorosHQ カラムによる部分精製においてPCE分解活性を示した画分の主なバンドは分子量20、30、70kDaであった。今後、さらに選択圧をかけながら精製を行うと同時に分解産物の同定を行う予定である。 PCEによる地下水や土壌汚染は世界的な問題であり、その浄化方法の構築が社会的に要求されている。地下水や土壌汚染は複合汚染であり、バイオレメディエーションの応用には多種の化合物を分解する微生物が要求される。本菌はPCE以外の揮発性有機塩素化合物の分解能も有しており、その候補の一つと考えられ、また、PCE分解機構の一部を明らかにしたことは学問的及び応用上大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度研究目的である分解活性制御因子の検討及び分解機構の解明について有用な結果が得られていること、また酵素の精製においても分解に関与するキー酵素群を特定していることから、当初の計画に照らしてみてH23年度の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
酵素の精製に関しては、さらに選択圧をかけながら精製を行うと同時に分解産物の同定を行う予定である。また、H24年度の研究計画通り模擬土壌を用いた分解実験を行う。本研究で使用する反応器としては、500mLの三角フラスコを使う。すでに反応器の準備を完了している。さらに、土壌中の群集構造解析に必要なDcode群集構造解析システムを購入し、予備実験を完了している。今後は長時間において汚染土壌中に有用菌を供給することによる群集構造の変化や分解産物の同定をDGGE bandのPCRを行ない検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
微生物の群集構造の解析において当初予想したより試薬の消費量が多いことが予備実験の際に判明した。また、DNA sequencerを用いた塩基配列の解析の際にも予想より試薬の消費量が多かったので、H23年度予算の一部をH24年度微生物の群集構造解析に使う必要性があった。そのため、残額はH24年度微生物の群集構造解析に必要な試薬の購入などに使う予定である。
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