研究概要 |
汚染前後の土壌試料中の優占種を把握することと、HK-1株の投入前後の微生物群集を把握した。実験に用いた土壌は室蘭工業大学キャンパス内から採取し、その非滅菌土壌20 gにPCE溶液を加え、50 mg/Lの汚染土壌を作製した。そこへHK-1株の初発菌体濃度[吸光度(OD600)]が0.2となるよう土壌に供し、密閉した120-mL用のバイアルの中で反応を観察した。 【結果及び考察】 経時変化に伴うPCE濃度は、HK-1株を加えていない非滅菌土壌に比べ、加えた土壌の方がPCEの減少が大きく、30日後にはほとんどのPCEが分解された。また、HK-1株を加えなかった土壌(非滅菌土壌)においてもPCEが初期濃度のおよそ30%にまで減少したことからHK-1株以外にも土壌中にPCE分解菌が内在することが示唆された。一方、1日目をピークにPCE分解菌の急激な減少が見られた。その後、菌の増殖が確認されたが菌の増殖速度は液体培養とは違いかなり遅いことが分かった。分解産物は主にシスー1,2ージクロロエチレンが確認され、全容の5%に相当するエチレンが検出された。 0日目のHK-1株を接種していないコントロール土壌、HK-1株を接種した30日目の土壌において、30日目では0日目で見られたバンドが見られなかったが、これは土壌にPCEを加えたことによって菌の増殖阻害が見られたことによるものと考えられる。しかし、30日目では0日目では見られなかった新たなバンドが見られた。これより、内在微生物にはPCEに影響されずに増殖できる菌が存在したことが分かった。また、HK-1株は内在微生物と競合することなくPCEを効率よく分解することができるという知見を得た。
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