実施した研究概要 本年度は小型の循環系処理システムを構築し、流通系における2-プロパノール(IPA)の分解速度、無機化速度について流量やIPA濃度の観点から評価した。また、無機化速度のさらなる向上のために昨年度やり残した不織布材料の評価を進めるとともに、物性の異なる他の有機汚染物質に対しても適用可能性を検討した。 得られた成果 光触媒担持不織布を設置した流通反応系において、UV光照射下でオゾンマイクロバブル(O3MB)を導入した系におけるIPAの分解速度ならびに分解生成物の無機化速度について評価した。IPA濃度、処理流量に依存したものの、O3MBによりIPA分解速度の向上が確認された。これより、バッチ系において十分な処理速度が得られれば、流通系への展開も可能であることが示唆された。一方で、流通系においては、光触媒等との接触が落ちることからバッチ系に比べ顕著な無機化速度の向上は得られなかった。これより、バッチ系においてさらなる無機化の向上が課題となった。これに対し、無機化速度を向上させるべく二酸化チタン(TiO2)光触媒を担持させる不織布について、材質のみならず、難燃剤の有無や光照射面積の差などについて検討を加えた。その結果、ポリエチレンテレフタレート(PET)素材の不織布が最も優れていることが明らかとなり、これまで検討を加えてきた条件にこの材質の光触媒担持不織布を導入した。その結果、過酸化水素(H2O2)/O3MB/TiO2-PET/UV系において、IPAの分解ならびに無機化速度を各要素技術の十数倍にまで複合的に高めることに成功した。また、IPAより親水性を示すエタノールに対して同様の分解実験を行ったところ、IPAと同等かそれ以上の分解速度、無機化速度が得られたことから、本手法は親水性物質に対しても効果的な手法であることが示された。
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