研究課題/領域番号 |
23510091
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
町田 基 千葉大学, 総合安全衛生管理機構, 教授 (30344964)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 活性炭 / 吸着 / 水処理 / 水質汚染 / 重金属イオン / 硝酸イオン / 表面化学 / 細孔 |
研究概要 |
活性炭(活性炭素)に発達している細孔構造と表面の化学特性を変化させることにより,有機化合物や重金属イオンをはじめとした水質汚染物質の吸着除去性能を向上させることを目標に検討を進めている。今年度は,先ず活性炭の細孔の大きさと水質汚染物質の吸着除去性能を実験的に調べた。活性炭は孟宗竹を原料に塩化亜鉛による化学賦活法を用いて調製し,乾燥竹と塩化亜鉛の比を変えることにより制御することができた。表面状態が一定の状態で細孔径のみの影響を検討した結果,細孔径を大きくするに従い有機化合物と重金属イオンの吸着速度は大きくなること,また,分子量300以上の嵩高い有機化合物の吸着容量が増大することが確かめられた。大きな細孔は湿度調整にも有効で,特に相対湿度60%以上の高湿度域で性能を発揮できることが確かめられた。この検討の中で400℃以下の低温酸化により塩化亜鉛などの賦活剤を用いることなく比表面積500m2/g以上の活性炭を製造できることも確かめられた。さらに地下水汚染で問題となっている硝酸イオン(NO3-)の吸着を検討した結果,活性炭表面ばかりでなく特定のマイクロ孔が硝酸イオンの吸着に寄与している可能性が実験的に示され,今後の活性炭の設計指針が得られた。活性炭の表面化学が吸着に及ぼす影響については,窒素,硫黄などの炭素表面のヘテロ元素が重金属イオンの吸着除去効果を酸性酸素官能基と比較しながら調べた。特に窒素含有量の高いポリアクリトニトリル樹脂および尿素などの含窒素化合物を用いて活性炭の調製,修飾をした結果,表面にピリジンタイプの窒素官能基を増大させることができ,活性炭で特に除去困難な重金属の代表であるカドミウムイオンの吸着が増大することが確かめられた。また,尿素処理を併用すると重金属イオンの吸着に不利なグラファイト層の4級窒素の生成が抑制できることも確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度は本研究の初年度であるが,活性炭の細孔径の影響と表面化学が汚染物質に及ぼす影響について,さまざまな観点から研究を進めることができ,H24年度以降の研究指針が明確になったと考える。また,検討途中であるが,一つ一つの検討項目をまとめることにより学術論文や学会での発表もでき,研究成果の発信もできたと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度に得られた結果をもとに,さらに文献調査を詳細に行うことによって,高性能活性炭の設計を目指して検討を進める。特に活性炭の原料の種類を増やすなど検討範囲をさらに拡げていく。有機汚染物質については細孔径と吸着特性を詳細に調べ,重金属イオンや硝酸イオンのように活性炭による除去が相対的に難しいと考えられる物質の吸着除去については活性炭の構造と表面との関係について集中的に検討を進めていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記計画を推進する上で当面必要な機器等は概ね揃っているので,研究費は主に石英ガラスや試薬などの物品費が主体となる。さらに,研究のスピードアップを図るために研究補助員の雇い入れたり,他の機関での分析機器の賃借をしたりすることに伴う費用が発生する可能性がある。
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