ポバール系、エマルション、固液相変化を呈するソフトマテリアルのQCM基本応答の温度依存性について検討した。クライオ条件ではポバール系は15wt%濃度でポリマー相の相分離・ポリマーのバンドル形成が進行し、これとともに相分離した自由水を含む空隙サイズが大きくなる事を確認した。この空隙は凍結ー融解のプロセスが繰り返されると成長し、満たしている純水の過冷却温度が低温側にシフトすることを熱分析ならびにQCMのアドミッタンス解析によって明らかにした。エマルション系では、粘度の高いエマルションは比較的温度に対して構造安定的に降るまい、QCMの応答に及ぼす影響が小さい事が認められた。冷凍耐性を失う温度以下に供すると構造崩壊し、QCMの応用は著しく変化し、各構成成分の応答を重ねあわせた粘弾性特性になる事を確認した。上記のソフトマテリアル中に活性炭微粒子を分散したマイクロゲルを合成し、これをターゲット分子を含む溶液(模擬環境水)と接触させ、QCM応答を調べた。いずれも、吸着に伴うQCM応答の変化を観測する事ができ、センサとしての適用性を確認した。ATカットしたQCMの温度依存性は古くから知られているが、急激な温度変化をした場合には歪が蓄積し、水晶の歪による振動数変化と測定対象物質の粘弾性変化による振動数変化の区別が困難になることを改めて確認した。また、ひとたび歪が蓄積するとひずみの緩和・解消に時間を要すること、緩和時間は電極材料に依存することが実験的に確認できた。今後、ゲル体のネットワーク構造、吸着剤の粒径及び固定化形態およびその手法についてより詳細な検討により実用的なセンサ開発に近づけたい。
|