繊維や樹脂の難燃剤であるHBCD(ヘキサブロモシクロドデカン)は、難分解性で高蓄積性であることから、環境中に放出された場合に高次捕食動物への影響が大きい。このため、効率的な処理技術の開発が期待されている。本研究では、超音波照射により難分解性のHBCDにOH基を付加させ反応性を高めた後、白色腐朽菌変異株によりHBCDを効率よく分解するシステムを開発することを目的に検討を進めた。本年度は、(1)超音波処理単独によるHBCD分解機構の解析、(2)超音波ーリグニン分解酵素複合系によるHBCD分解条件の検討を行った。 超音波処理単独によるHBCD分解では、照射周波数を404kHzとした場合、異性体によって分解速度が異なり、γ体<β体<α体の順に分解速度が高くなることが明らかとなった。また、処理後の反応液からテトラブロモシクロドデカン、トリブロモシクロドデカン、ジブロモシクロドデカンに相当する分子量の物質が検出されたことから、脱臭素による分解が進行すると考えられる。さらにシクロドデカン環が開裂した構造の物質が検出されたことから、脱臭素反応だけでなくOHラジカルの付加を伴う開環反応も起こっていると考えられる。 超音波ー白色腐朽菌複合処理では、白色腐朽菌が生産するリグニン分解酵素であるマンガンペルオキシダーゼを用いてHBCDの分解を検討したところ、超音波照射後にマンガンペルオキシダーゼを作用させることにより、単独処理に比べて低濃度のマンガンペルオキシダーゼでHBCDが分解可能なことが明らかとなった。
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