研究概要 |
昨年度の結果では、パーオキシダーゼと過酸化水素だけでは分解反応が生じなかったので、今年度は、NADHを共存させパーオキシダーゼによる塩素化エチレン分解を試みた。まず、市販のホースラディッシュ4種類を用いて過酸化水素とNADHの存在下でヒドロキシラジカルが生じるかを確認した。TOYOBO製とシグマ製TypeI, Type II, TypeIVを用いたが、いずれもヒドロキシラジカルの発生は確認できなかった。そのため、塩素化エチレン類の分解実験には至らなかった。 次に、ラッカーゼに着目し、メディエーターとして2,2'-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルフォン酸)や1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いて、ラジカルによる分解を検討した。 方法:塩素化エチレン類として、cisDCEを用いた。ラッカーゼはシグマ製を用いた。20ml容バイアル瓶にcisDCEを10mg/Lとなるように添加し、50mM酢酸緩衝液(pH 4.5)、メディエーター5mM, そしてラッカーゼを0.22 U/mlとなるように入れ、2日間反応させた。バイアル瓶中のヘッドスペースガス中の塩素化エチレン類をガスクロマトグラフで測定し、経時的な減少を追跡した。その結果、顕著な分解反応は見られなかった。 並行した研究で、微生物代謝産物で分子量約3000の物質がPCEを顕著に減少させることを見出した。この物質は、オートクレーブ処理により活性を低下させること、活性炭吸着されること、pH10が最も安定した活性を示すこと、プロテアーゼ処理で活性を低下させることなどを見出している。
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