研究課題/領域番号 |
23510097
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
遠藤 宣隆 山口大学, 理工学研究科, 助教 (40314819)
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研究分担者 |
比嘉 充 山口大学, 理工学研究科, 教授 (30241251)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 海水濃度差発電 / 逆電気透析 / イオン交換膜 / ポリビニルアルコール |
研究概要 |
アニオン交換膜、河川水側ガスケット+スペーサーネット、カチオン交換膜、海水側ガスケット+スペーサーネットを重ねたものを1セルユニットとし、所定のセル数になるまで交互に重ねてREDスタックを構築した。これによりREDスタック内の各流路に模擬海水、模擬河川水、電極溶液を流通させることで発電が可能となることを確認した。 最大出力密度Pmaxは塩水濃度比r(=塩水濃度に対する河川水濃度の比)の減少と共に増加し、r=10~20近傍で最大値をとった後、減少した。これは濃度比rが減少することで河川水側のNaCl濃度が増加し、溶液抵抗が減少することで通電量が増加し、出力密度が向上したと考えられる。しかし、それに伴い濃度差が減少するため、濃度差により発生する起電力が低下するため、出力密度が低下したと考えられる。そのため、出力密度はrに対して最適値を有すると考えられる。また、海水・河川水の線速度による影響評価の結果より、海水線速度4.75 cm/s、河川水線速度2.2 cm/s において、最も高いPmax 0.68 W/m2が得られた。 上記結果に基づきREDシミュレーションを作成した試算結果と比較すると、シミュレーション結果の90%の出力が得られたことが確認された。また、同シミュレーションの試算より、PVA系イオン交換膜は膜間距離1.0mmの場合、輸率0.9の膜において膜抵抗が1.9Ωcm2以下であれば、市販のイオン交換膜以上の出力密度が得られると算出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膜特性の目標値を明確にするため、膜モジュールの試作および基礎データの取得とシミュレーション構築を前倒しして実施し、市販のイオン交換膜において試算値の90%の出力が得られたことから、評価用膜モジュールは発電試験が可能であることが確認された。 最大出力密度Pmaxは塩溶液濃度比rの減少と共に増加し、r=10~20近傍で最大値をとった後、減少した。これは濃度比rが減少することで河川水側のNaCl濃度が増加し、溶液抵抗が減少することで通電量が増加し、出力密度が向上したと考えられる。しかしそれに伴い濃度差が減少するため、濃度差により発生する起電力が低下するため、出力密度が低下したと考えられる。そのため出力密度はrに対して最適値を有すると考えられる。 膜間距離0.5mmでは、1.0mmと比較してPmaxは1.4倍の値を示した。これはイオン交換膜間の距離が短縮されることで溶液抵抗が低下し、より通電量が大きくなったためと考えられる。従って膜間距離を小さくすることで出力の向上が期待される。しかし膜間距離の減少は流路抵抗の増大を招き、溶液流量の低下による濃度分極の増大により出力が低下することが考えられる。従って膜間距離を決定するガスケットの選定やスペーサーの構造等を考慮し、最適化を検討する必要がある。 また、海水および河川水の線速度は、REDモジュール内の膜内濃度分極および河川水側の溶液抵抗により、出力に影響することが確認された。今回の実験条件では市販膜を用いて、海水線速度4.75 cm/s、河川水線速度2.2 cm/s において、最も高いPmax 0.68 W/m2が得られた。 また、上記発電試験の結果に基づくシミュレーション評価より、ポリビニルアルコール系イオン交換膜では輸率が0.9の場合、膜抵抗が1.9 Ωcm2以下である必要があると見積もられた。
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今後の研究の推進方策 |
不均一荷電構造を有するポリビニルアルコール系イオン交換膜を作製するにあたり、その目標値を明確にするため、REDモジュールの作製・評価を先行して行い、REDシミュレーションの構築および試算を行った。 平成24年度は多様なパラメータの変化に対応したシミュレーションの構築およびポリビニルアルコール系イオン交換膜の作製検討を引き続き行う。さらに、より大規模なREDテストシステムの構築に必要なREDモジュールの改修(膜30対から構成されるREDモジュールの構築)を検討する。 平成25年度は上記結果をコンピュータシミュレーションにより解析し、REDトータルシステムの構築およびシミュレーションによる評価を行い、その有効性について検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
より大規模なREDテストシステム構築のため、REDモジュールの改修と発電規模に対応した電気化学測定用の機器の購入を行う。目標性能を達成したポリビニルアルコール系イオン交換膜の作製、REDモジュールの性能評価およびその性能を試算可能なシミュレーションの構築は昨年度に引き続いて行うため、そのための試薬・器具費を計上する。
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