研究課題/領域番号 |
23510099
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
宮武 宗利 宮崎大学, 工学部, 助教 (40315354)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環境技術 / 応用微生物 / 酵素 / ヒ素の無毒化 / アルセノベタイン |
研究概要 |
現在、地下水や土壌、工場廃水など生活環境から各種処理方法で除去回収された無機ヒ素を、無害化し自然に還元するような処理技術の開発が望まれている。無機ヒ素の無害化処理方法としては、無機ヒ素のアルセノベタインへの変換が有効であると考えられており、色々と研究がなされている。しかし、現時点では変換効率が低いなど実用化には至っていない。一方、申請者が土壌より分離したヒ素メチル化細菌は、これまでに例を見ない無機ヒ素を高効率でメチル化する能力を有し、アルセノベタインも産生することが分かっている。そこで本研究では、微生物の機能を利用して無機ヒ素をアルセノベタインに変換するヒ素無毒化システムの構築を目的とした。 まず、アルセノベタインへの変換効率の改善を図るため、微生物のアルセノベタインの産生機構の解明を目指し、アルセノベタインの産生に関与する酵素群をとらえ酵素学的特性を明らかにすることにした。アルセノベタインの産生を確認しているヒ素メチル化細菌について、反応に関与している酵素の調製条件を検討した結果、効率的に酵素を抽出することができるようになった。菌体内より抽出した酵素は、最適温度や最適pH、化合物の影響などの酵素学的特性を明らかにし、アルセノベタイン産生における最適条件を決定した。それにより、若干であるがアルセノベタインの変換効率の改善が図れた。さらに自然界から新たにヒ素メチル化菌やヒ素吸着菌を分離した。ヒ素メチル化菌の中で1株については、アルセノベタインの産生を確認したため、今後酵素を抽出し特性を検討していくことにした。ヒ素吸着菌については、ヒ酸還元能を有することからヒ素メチル化菌と組み合わせることにより、アルセノベタインへの変換効率の向上が図れる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルセノベタイン産生に関する酵素を効率的に調製し、酵素学特性を検討することができた。また、ヒ素メチル化菌やヒ素吸着菌を分離し、ヒ素メチル化菌の中で1株について、アルセノベタインの産生を確認した。ヒ素吸着菌については、ヒ酸還元能を有することが分かった。しかし、酵素精製の実験において、分取用電気泳動装置の納入の遅れ等により酵素精製が不完全であり、まだ単一に精製された酵素が得られていないため、若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
分取用電気泳動装置の納入の遅れ等により不完全であった酵素精製実験について、次年度も継続して実験を行ない、単一に精製された酵素を調製する。精製した酵素タンパク質を用いて、外部に依頼してN末端や内部アミノ酸を決定しプローブを作成した後、PCRを用いて組み換え体を作成し、酵素タンパク質の全塩基配列とアミノ酸配列を明らかにする。決定した構造から、これまでに報告されているヒ素メチル化酵素などとの相同性を比較検討することで、本酵素の構造的特徴を明らかにし活性向上が図れるかどうかを検討する。さらに、作成された組み換え体を使って、宿主やプロモーターなどを検討することで、組み換え酵素の大量発現を行なう。さらに、新たに分離されたヒ素メチル化菌について酵素学的特性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費については、平成23年度から継続して行う酵素精製実験と新たに分離した微生物の酵素実験に使用する。翌年度に請求する研究費については、当初に計画したとおり遺伝子実験と酵素生産実験に使用する。
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