研究課題/領域番号 |
23510101
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
鈴木 祥広 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90264366)
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研究分担者 |
井上 謙吾 宮崎大学, IR推進機構, 助教 (70581304)
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キーワード | 薬剤耐性菌 / 河川環境 |
研究概要 |
薬剤耐性菌は,特定の患者や病院施設に限らず,人々の生活と密接に関わる都市域の水環境においても,存在している可能性を否定できない。真に安心して生活できる潤いのある都市環境を構築するためには,水環境における薬剤耐性菌に関する正確な情報を蓄積し,適切な対策を講じることによって,人々の不安解消および衛生学的保全を図る必要がある。 そこで,中規模都市である宮崎市の二つの河川,清武川と八重川の調査対象として,流域毎における緑膿菌の分布と各種抗生物質に対する耐性株の出現率について調査した。緑膿菌は,河川の上流から下流に至って,2-32 CFU/100ml の範囲で広く分布した。MICによって薬剤耐性を評価すると,上・中・下流点のぞれぞれの単離株において,各種抗生物質に対する感受性が異なり,流域毎に薬剤の抵抗性に特徴があった。また,河川によっても各種抗生物質に対する感受性が異なり,流域および河川の違いによって河川水に存在する緑膿菌の各種薬剤に対する感受性は,変化していることがわかった。さらに,緑膿菌による感染症の治療薬として重要なペニシリン系のピペラシリン,セフェム系のセフォタキシム,カルバペネム系のイミペネムに対して,0.2-2%の低い耐性率ではあったものの,都市を経由する河川水中に存在することが確認された。日本のように,社会基盤が国内全土で整備され,集落においても都市と同様の生活スタイル,医療などのサービスを享受できる国土においては,見かけ上は清浄に見える河川においても薬剤耐性菌が分布していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
河川の上流から下流における継続的な細菌学的調査を継続的に実施し,その成果を国際ジャーナルに投稿し,掲載されるに至った。また,河川流域から単離した薬剤耐性菌の遺伝子解析を行い,菌種の違いによって,各種薬剤に対する感受性が異なることが解明されつつある。したがって,当初の計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
緑膿菌の薬剤耐性の実態調査で得られた成果に基づいて,ふん便汚染指標細菌である腸球菌について,河川での薬剤耐性の事態調査を実施する。河川流域における薬剤耐性菌の実態調査において,河川の上流から下流における継続的な細菌学的調査を実施する。また,腸球菌の単離・同定と菌株の薬剤耐性試験を実施する。さらに薬剤耐性遺伝子の解析を行う。 今年度は,最終年度であるので,河川流域における薬剤耐性菌の実態調査とMIC試験の結果から,その分布状況をとりまとめ,成果の発表を行い,総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り,河川からの細菌の単離と同定に必要な培養器具類,遺伝子解析の試薬類に研究費を充てる。また,複数の抗生物質を購入し,MIC試験に用いる。備品は購入性せす,謝金等へも転用する予定はない。
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